その震えのままつかまえて
監督 池田 奈都季


 
 

森を巡る映画祭

出演
西田 紬紀
松本 海空
 
撮影                                  
池田 奈都季
櫻井 進太郎
 
音声
森 浩太郎
 
撮影助手
渡邉 栄蓮
 
監督・脚本・編集
池田 奈都季

家族とはなんだろうか
 
私たちは家族に対して、無条件に感謝しなければならないという価値観のなかで育ってゆく
生んでくれたから
育ててくれたから
大切にしてくれたから
しかし親が子を育てるのは、その選択をしたのが彼ら自身である以上、当然の義務である
子ども側には、感謝を返す義務があるのだろうか
 
私たちは生まれた瞬間から家族という一つの組織に属し、そこから離れることに罪悪感や恐れを抱く
どれだけ不満があっても、どれだけ距離を取りたくても
親を嫌いになるのは悪いこと
親不孝者にはなりたくない
そうした無意識のプレッシャーに縛られてしまう
そしてそのプレッシャーこそが、無自覚な支配ではないか
どれだけ外の世界に出ても、家族という関係は生まれた時から死ぬまで続く
それが重荷ならば、変えてしまえばいい
新しい場所で、新しい関係を築けばいい
理想の「家族」をつくればいい
 
 
 

作品解説

 
栞と雲雀、二人はその思いで繋がった
そして、姉弟になることにした
 
二人でいるうちに考える
家族とはなにか
愛し愛されることが当然なら、嫌いになるのも当然であっていいのではないか
家族に縛られるのが嫌なら、自由になればいいのではないか
 
それは本当に新しい家族なのだろうか
もしかすると、ただの孤独かもしれない
 
だからまずは、家族の存在を重く捉えすぎないようにしよう
会いたい時に会い、施したい時に施し、嫌いになった時に嫌いになる
そのくらい自由でいていい
そうすれば、不都合な家族という組織に縛られずに済むかもしれない
 
栞は雲雀を大切にする
その姿は母性とも呼べる
雲雀はそれに反抗する
その姿は反抗期とも呼べる
 
二人は、どうすることもできないまま姉弟を続けていく
 
 
食卓について
 
食事とは本来、他の命を喰らう行為である
生きるために殺す
それは人間の本能に根ざした殺戮であり、人間が原初から持ち合わせている悪意そのもの
そしてその食事を家族で囲む食卓は、そうした悪意を隠し持った最悪の儀式にも見える
 
 
雲雀の言葉
「言わないでもわかってくれる人が好き」
 
それは、理解してもらえないという孤独の裏返しである
もっと自分を感じてほしい、察してほしいというこどもじみた願い
本当に相手に伝わってほしいなら、自分からも歩み寄る必要がある
言わなくても伝わるためには、まず自分のことを知ってもらう過程がいるのだ
それを雲雀はしていない
栞を無視し、避け、黙る
それでもなお分かってほしいと願ってしまう
栞はそれをすべて理解している
だからこそ、「言わなくてもわかってくれる人が好き」という言葉は、彼女を置いていく
 
雲雀は「姉弟」という関係すら手放したくなる
本当はこの関係を壊さずにうまく続けていたい
自分で選んだ言葉を、道を、正しいものと信じていたい
その願いが、次第にプレッシャーへと変わっていく
守るべきものが多くなればなるほど、息が詰まってくる
 
どこにいても、まるで鳥籠の中にいるみたいだ
 
だが、どんな鳥籠であっても、その中にいる鳥によってはそこは「家」になり得るのかもしれない
恐れも、寂しさも、静かに羽を休められる場所になれば、それはもう檻ではなくなる
 
今の二人は、その安心をまだ見つけられていない
 
 
「栞と俺は、一生の友達だよ」
 
血の繋がりもなく、恋人でもないのに家族になろうとするのは、二人が安心できる枠に逃げ込もうとした結果だった
姉弟になることは、関係の正当化であり逃げでもあった
この言葉は「さようなら」のような別れの言葉ではなく、まだ一緒にいたいという意志表明なのだ
 

02.


PROFILE

監督 池田 奈都季

2005年生まれ 神奈川県厚木市出身
東京造形大学 映画・映像専攻領域在学

Instagram @nnnatsssss3
 
主に映画を制作
人の行動の一つひとつの魅力、その人そのものの姿、仕草、笑い方、言葉遣いを映像に収めるため探求中。
 
2024
16mmフィルム・課題作品
ショートフィルム・課題作品
ドキュメンタリー・課題作品
 
2025
『そう遠くはない』短編映画・自主制作

03.


Dialogue

対談
出演者 松本 海空
×
監督 池田 奈都季


松本 海空
東京造形大学 彫刻専攻領域在学
本作品出演者


 
池田:脚本自分で喋ってみてどうでした?
 
松本:自分が思ってもないことを喋るから、そこが一番難しかった
 
池田:あーなんか、脚本自体がかなりファンタジーというか、説明がなくて抽象的な作品になってましたが何か気になるところとかありますか?
 
松本:現実感がない作品の雰囲気だったから、前の作品(『そう遠くはない』短編映画・自主制作)とは全然僕が、僕だけが中二病なだけで。今回は全員変で、余計難しかったですね
 
池田:なんかその自分でセリフ喋ってて、このセリフどう言う意味だったんだろうとか気になるところありますか?撮る前に構想とか何も伝えなかったので
 
松本:前の作品はメッセージ的なのがあったけど、今回はそこまでずっとふんわりしてるというか、まあ意図はもちろんあるんだろうけど。なんか、詩みたいな。だからそんなな意味が気になった時はない
 
池田:なるほど。俺は詩を読んでるぜ!と思って喋ってた?
 
松本:まあ、そう。ちょっとかっこつけすぎ、やめます
 
池田:栞と雲雀の関係性をいまいちちゃんと書いてないんですけど、海空から見てどんなイメージでした?
 
松本:うーん。共依存的な?雲雀くんはどうせ友達がいないから
 
池田:ど、どうせ!?
 
松本:栞ちゃんは雲雀くんのこと気に入ってて、雲雀くんも嫌々ながらおままごとに付き合わされる感じ
 
池田:栞さん友達いそう?
 
松本:いやー、たくさんはいない、本当にうわべだけ、友達とも思ってなさそう。いないな、いない。あんま自分を開示してかない感じがする
 
池田;確かに、雲雀にすらあんましないもんね
 
松本:そうだね
 
 
池田:この映画祭のテーマが「家族」「家」「生命」なんですけど、私は結構家族の部分に重きを置いていてまして、海空が思う「家族」がどんなイメージか聞きたい
 
松本:いやまあ、人それぞれだとは思うけどなんだろう、応援してくれる人とか、ですか?
 
池田:あー、人生を、全体的にね
 
松本:そう、全面的に支援してくれる人。血の繋がってる繋がってないに関わらず
 
池田:なるほど。自分がこの脚本を書いたときは、家族とのコミュニケーションとか、もう義務じゃん、やんないといけないことじゃん。だから、大事に育てられてきたら絶対に感謝を返さないといけないというか、その分何かお返ししないといけないっていう義務が生まれた時から存在してるのが嫌で
 
松本:あー、不幸になるか恩返しをしなきゃいけないかの二択?
 
池田:そう。それが自分は、嫌かも!と思って。この二人を作ったんです。脚本書くってなったら自分の経験しか喋れないじゃん。だからもう、あの二人は私と同じ考えを持っているんですよ
 
松本:それでいいと思う
 
池田:その、海空から見てあの二人はどう?映画だけ見たら変な人たちかもしれないけど、考えてることは誰でも思うようなことって思ってるんだけど
 
松本:でもなんか、ああいう二人のキャラクターの性質の人が現実にいたら、なんかこう受け入れる姿勢があると思う。終始対立しているというか、話になってない感じが夢の中みたいな、現実感のない感じになってるにかなと思いました
 
池田:あーいいですね
 
 
 
池田:そうだな、せっかく出演した人と喋るんで二人とも演技褒められてましたよ
 
松本:クソうれしー。でも演技もクソもないあんなもん、正直、嫌なことを思い出しながらやればああいう顔になる
 
池田:最悪だ。みんな演技褒めてましたよ、特に海空は声がいい
 
松本:えー嬉しいなー。カメラの前で演技なんてやったことないから
 
池田:今回ね、顔面ドアップを撮りたかったからね
 
松本:そう、事前に毛穴まで見えるって言われてて、池田奈都季の撮影は僕に一切のオシャレを禁じるから
 
池田:すみません
 
松本:1シーン撮った日が雨だったせいで2,3シーンとで僕の髪質が変わるっていうあれはでもなんか、最初のシーンから何日も、何ヶ月も時間があったと仮定して、「アンタちょっと、身だしなみくらい整えなさいよ」って言われたのかなっていう
 
池田:あーなるほど、そうしましょう。ちゃんとね、二人にも別の家庭があるからね、結局お家帰ってまたくるんですよ。
 
松本:そうだね
 
池田:何歳くらいだと思う?あの二人は
 
松本:まあでも高校生だろ。違うか、いやお酒は飲んでないでほしい。そもそも現実感がないから
 
池田:確かに、歳とかじゃないね
 
松本:まあ18だろ。ただし、お酒は飲んでいない
 
池田:おー。でも一番最初のプロットでは二人とも20歳だった。ちょっともう将来を見つめてしんどい時期じゃないとあの狂い方はしない
 
松本:そう雲雀くんも高校生であれならいいんだけど、20歳であれはちょっとやばい。何の仕事もさせてもらえないよあれじゃあ
 
 
池田:海空から私に聞きたいこととかありますか?
 
松本:うーん。ロケーション選びなんかこだわりがあったりしますか?森と言っても色々あんじゃん
 
池田:大学の森とは決まってはいたんですけど、うーん、割とフィーリングで、最初の追いかけ合う森は庭、椅子に座って喋るシーンはリビングっていうイメージでした
 
松本:なるほど。撮影時間のせいだとは思うけど、空の明るさが違くて。でもそれがいいかなと、雰囲気が違う別の場所ですって感じが出てて
 
池田:おー。ありがとうございます