森を巡る映画祭
出演
田坂優人
伊藤英司
撮影・脚本・編集・監督
稲邊ジュリアナマリス
信号機、急ぐ足音、車のブレーキ、見知らぬ誰かの苛立ち。
そんな音に慣れてしまった、聞こえていたものが聞こえなくなった。
雨が葉を伝って落ちる音、風で木が揺れる音、小鳥の噂話、柔らかな足音。
その音が鳴るところへ。
『森と音と家族』
テーマ解説
今回、森を巡る映画祭の中で私が「家族」というテーマを選んだのは、私にとって森という場所が、家族が集まる場所そのものだったからです。
私はフィリピンで生まれ育ちました。田舎に帰るたびに、そこには決まって同じ風景が広がっていました。家畜として飼われている豚、朝になると鳴き始める鶏、遠くで遊ぶ子どもたちの声。そういった音たちは、どれも私の記憶の中で「家族」と深く結びついています。
都市では、情報が溢れ、誰かの生活が絶え間なく流れ込んできて、自分自身と静かに向き合う時間がどんどん失われていくように感じます。しかし森の中では、雑音のような他人の気配がなく、音はあくまで「自分の領域」に優しく響きます。それはまるで母の胎内のように、静かで、温かく、守られている感覚です。時の流れもゆったりとしていて、心が深く呼吸できるようになります。
家族とは、血のつながりだけではありません。たとえ血縁がなくても、迎え入れてくれる人たちと共に過ごす場所——それが、私にとっての「家族」でした。そして、その場所はいつも森のように、穏やかで、温かく、やさしいものでした。
だから私は、森と家族の関係を自然と重ねてしまうのです。森のぬくもりと、家族のぬくもり。どちらも私にとっては同じ「帰る場所」でした。
この作品は、そんな私自身の原風景と心の記憶をたどりながら、「森」と「音」、そして「家族」というテーマを通して、温もりの本質を見つめ直す試みです。
作品解説
本作では、出演する2人のキャストは実際には撮影現場で一度も会っていません。物語の中でも、彼らは「同じ場所にいるけれど、決して交わらない存在」として描かれています。服装のリンクや行動の重なりがあっても、それぞれがまったく異なる人生を歩んでいるという設定です。
そのような設定を映像で表現するために、私は「クロスカッティング」という編集技法を用いました。これは、異なる時間軸や視点を交互にカットインさせることで、空間的には一緒にいるように見えるが、実際には異なる世界を生きていることを示す方法です。
舞台である「森」は、ただの自然空間ではなく、2人の存在が重なり合うきっかけとなる特別な場所です。彼らが兄妹なのか、赤の他人なのか、過去と未来の存在なのか。それとも一度も出会ったことのない2つの魂なのか――その関係性をあえて明確には描かず、観る人の想像に委ねる構成としました。曖昧だからこそ生まれる「つながりの予感」、それを大切にしたかったのです。
そしてラストシーンでは、初めて2人が声を発します。この瞬間、視点が一気に反転します。語られているのは少年なのか、少女なのか、それとも画面の外にいる「あなた自身」なのか。もしかしたらこの物語は、観ているあなたがいつのまにか森の中に入り込み、2人のどちらか、あるいは両方と家族のようなつながりを持った――そんな不思議な感覚を残して終わるように構成しました。
02.
PROFILE
監督 稲邊 ジュリアナマリス
2004年にフィリピンのマニラで生まれ、埼玉育ち
東京造形大学 映画・映像専攻領域
大学から始めた映像制作、
『日常と物語』の境目を探しています。
2024
『足並み』ショートフィルム・課題制作
『店長』ドキュメンタリー・課題制作
Instagram @inabe__ma21z
03.
Dialogue
対談
出演者 田坂優人
×
監督 稲邊ジュリアナマリス
田坂優人
東京造形大学 絵画専攻領域
本作品出演者
稲邊「今回、どうでした、、?なんか普通によかった?」
田坂「いやー、いいも悪いも、やっぱり自分が出ちゃってるから、自分のことが気になるし、もっと表情とかできたやん?みたいな」
稲邊「うぉ、ありがとう、プロ意識高いねさすが」
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稲邊「さっき自分も映像作りたいって言ってたじゃん?もしも自分が大学の森を題材に作るとなったらどんなお話にする?」
田坂「なんややっぱ人って強すぎるから、シュールな感じにするかも」
稲邊「逆に?、人じゃないんだ、」
田坂「人じゃないね」
稲邊「何を使うの?」
田坂「うーむ、掃除機とか」
稲邊「え、それ面白いね」
田坂「tpoの掛け合わせとかやりたい、物語として面白いと言うよりは絵面が面白い、気になる!でいい」
稲邊「なんかその、絵画専攻なりの映像専攻とは違う感じがまたいいね、何かあればお手伝いします、、」
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稲邊「最後に、撮影しててやだったところと、楽しかったところはあった?」
田坂「うーん、むし?」
稲邊「虫がやだった?」
田坂「虫はやだけど、うーむ良かったことはかっちり決まってなかったのが良かったには良かった」
稲邊「おー良かった、作品にどう作用してるとかじゃなくてその、、」
田坂「演じる、うん、演じるってこと、やっぱり期待には応えられないじゃん?プロじゃないから、、(苦笑)」
稲邊「いや、でも良かったすよ、やっぱうめじゃないとあの絵撮れなかったからね」
田坂「いやいや、そーゆうのいいの(苦笑)」
稲邊「いや、まじまじまじ!!」