息をよむ
監督 平澤 真帆


 
 

森を巡る映画祭

出演
影山祐斗

制作
平澤真帆

東京造形大学 木調室
 
木の匂い
粉っぽいシンク
全てがうっすらと茶色いヴェールに包まれたような優しい空間に、彫刻刀と木が触れる音がする
 
彼と木
彼と素材
彼と猪
彼と作品
 
そのどれもでもある2つの間で行われる対話
その声を聞くため
空間と、人と、木と、息を
よむ
 


〇素材との対話

彫刻専攻の友達が教えてくれたのは、彫刻で最も大切な事だった。木と、粘土と、石と、素材は問わず対話をするらしい。私には分からない感覚。出来ない対話。例えば映画で、登場人物が黙って見つめ合っている時、そこに対話はない。でも私は静かな対話を感じていることを思い出した。ただぼうっと眺めているだけでは作家と作品の対話は聞こえないだろう。しかしそこにカメラがあったなら。レンズ越しであれば、聞こえる対話があるのではないだろうか。そう思い4年生で木彫に熱心だと聞いた影山裕斗さんに連絡をとった。


〇森への眼差し

あなたが森に入った時どこを見るだろう。木々の重なり、葉で覆われた空、不安定な足元。私はついつい遠くを見てしまう。森全体を捉えるために。影山さんが指を指すのは、どれも具体的木の部分だった。木の皮のゴツゴツとした様子、木の幹から伸びる細い木の枝。道から外れた斜面に倒れる木を見て、「生き物みたいだ」と言い熱心に写真を撮り、頭から首、体までその姿を語ってくれた。森の木の美しさを見つけ、リスペクトの眼差しを向けているのは、普段から森いない木と関わっているからなのだろうか。影山さんの目に映る森の美しさを、私がカメラのレンズを借りて作品に映し出したい。そういった思いで見た森はとても繊細に感じた。レンズを借りて、影山さんと私の目がリンクしているような不思議な気持ちになった。


◯命へのリスペクト

事前に影山さんについて知っていることはほとんどなかった。木彫が大好きで猪を彫っているらしいということ。猪を彫るために、猪肉を食べにいったらしいということだけだったが、その猪肉を食べに行き体の内側から命のエネルギーを感じよう、という姿勢に強く興味を持った。木彫室で木を彫っている間、影山さんから聞いた話は、木彫に対する愛だった。祭りの神輿に施された木彫を見て、木彫に強く興味を持ったこと。木を掘る時間と感覚が何よりも好きだということ。しかし、森の中では全く違う話が聞けたのだ。あんなに木彫に対する想いを語っていたのに、木を触り「自然のものには敵わない。掘る必要ないんじゃないかって思う」と語る影山さんの姿はとても印象的だった。たくさんの時間をかけちょっとずつ掘り続ける木彫をしているのに、自然の木を前にして掘る必要に疑問を抱いているのは、勿論生えていた木が美しいからだけではない。普段から、木という素材を触りえなるギーをもらえると言い、掘らせて貰えて感謝していると語る影山さんの姿を見て、この作品の魂はここである!と強く感じた。普段から木に触れる影山さんの語る、素直な生命へのリスペクトは、真っ直ぐで、純粋に私の中に響いた。

02.


PROFILE

監督 平澤 真帆

2005年生まれ 埼玉県出身
東京造形大学 映画・映像専攻領域在学
https://www.instagram.com/ma_hoh1

映画、写真を制作している。
現実とファンタジーの境界線を模索中。
閑話主題。誰も語らない優しい世界を捉え直したい。

2022
『埋葬』 ドラマシナリオ・課題制作
 
2023
写真集『箱庭』 高校卒業制作
『チェダーチーズ』 ドキュメンタリー・課題制作
組み写真 『わたし』
『三人のわたし』 自己ドキュメンタリー・課題制作
 
2024
『隣のあなたへ』 16mmフィルム・課題作品
『吉岡正人』 ドキュメンタリー・課題作品
 

03.


PROFILE

出演者 影山 裕斗(かげやま ゆうと)


 
 

2003年生まれ 静岡県出身
東京造形大学 彫刻専攻領域在籍
 
https://www.instagram.com/mi_ka__zu_ki
 
木を用いて彫刻制作をしている。
木という素材と、神話に登場する日本古来の動物や霊獣が持つ神秘性に着目。
それらをフィールドワークを通して独自の世界観に落とし込み、彫刻にしたいと考えている。
 
2024
『木鼻』 欅 h.210×w.110×d.110
『獣道  マケット』 水粘土 h.41×w.55×d.41
『獣道 マケット』 石膏 h.41×w.55×d.41
『獣道』 樟 h.155×w.60×d.50


『木鼻』

『獣道  マケット』

『獣道 マケット』

『獣道』

04.


Dialogue

対談

竹内悠歌 
×
監督 平澤 真帆



竹内悠歌
 
2005年生まれ 香川県出身
東京造形大学彫刻専攻領域
 
彫刻専攻領域の友人。今回の撮影にあたり、影山さんを紹介してくれた。
「素材との対話」の話などは彼女が教えてくれた。この作品は彼女のおかげで生まれたものだ。




(平澤)最初にまず作品の感想を聞いてみてもいいですか?
 
(竹内)私が知りたかった人(影山さん)の言葉が詰まってた。
 
(平澤)なんで今回影山先輩を紹介したの?
 
(竹内)影山さんが3年生だった頃の成果展の講評会に行って、これもまたイノシシの前作みたいな、この作品のちょっと手前の段階の作品をやっていて。その時に、イノシシ食べに行って話をしていました。自分は香川出身で猪を食べるのも良くあるし、それを自然を知る行為と捉えてはなかった。けどそれを聞いて、「あれ? 食べるって最高の自然を知る手段だったのじゃないかな」って。 この人の作品に、そこですごい共感性といいなっていう気持ちが生まれて、自分が(影山さんのことを)知りたかったから紹介した。 私が影山さんの言葉を聞きたかったから紹介したんです。それがちゃんと言葉になってた。 多分、私が聞きたいことを影山さんに直接聞いても、彫刻家同士の言葉の話し合いになると思う。それはそれで深いとは思うのだけど。 ドキュメンタリーを撮るってなった時、影山さんはどういう言葉を使うのかなと。 (今回の作品の言葉は)よりすっと入ってくる言葉ばっかりだった。
 
(平澤)影山さん、本当はもっと語ってくださっていたけど、動画の構成的にここしか使えなかった…。
 
(竹内)すごく長いでしょ。一回4時間くらい…!
 
(平澤)よ、4時間?(笑)
    そう、影山さんも本人も止まりませんって言ってた。
 
(竹内)(影山さんは)止めてほしいかもしれないけど、止めたらだめだよ。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
(平澤)今回はカメラ越しに見ていて、「あ、ここがいいなぁ」っていう瞬間を切り切り取っていたから、彫刻の人にとって大事なところが撮れていたかわからない。 (影山さんの)目とかアップの手元とか、実際に彫っている人にとって大事な瞬間ってどこにあると思う?
 
(竹内)彫刻の人にとって大事なところ…。彫ってない時も結構あるかもしれないです。生活している時とか、それこそ森のカットも良かったと思うし、作品を遠くからボーっと見つめて、何にも考えてないような時が一番考えていたりするし。 彫っている時は「ああ、彫っている無心の顔だ」って感じた。
 
(平澤)確かにすごく見てた!彫って(作品を)見て彫って見てだったから。もしかしたら見ていた時間の方が長かったかもしれない。
 
(竹内)多分、この進み具合までいったら、この場所にある意味とか纏っている空気とかを考えていると思うから。そういうのを見ている瞬間は木彫室に行って、影山先輩作って話しかけても出てこないじゃん。本当にただ静かに黙って、そこにいればいつか出してくれるのかもしれないけど。 それは無理。 私はものではないし、彼の意識の外に行くことはできないから。 でも、それをカメラの視点からなら見られるんじゃないかなと思った。
 
(平澤)そうか、じゃあ作品を見ているショットっていうのは、もっと大事だったか。
 
(竹内)うん、もっとあったらハッピーだったかも。
 
(平澤)やっぱり彫っているっていうことに注目しちゃう。
 
(竹内)素材あんま触れないと、当たり前になってこないから不思議だなと。最近石を掘っているんですけど、結構ぶち当たるんですよ。 壁に。やっていると、「ああ、掘らない方がよかったな」みたいな。影山さんも言っていたけど、素材のままの方が魅力的じゃないですか。
 
(平澤)石は石のままの方がいいみたいな?
 
(竹内)砂岩(竹内が彫っている石)って何十、何百年も積み重なったものがギューって編成して一個石になっていて。 だから、私程度がたったの1ヶ月2ヶ月手を加えたところで、絶対太刀打ちできないもので。 石は何億年前とかできて山から切り出されて、言ったら化石みたいな感じだけど、木とかってさ現に生きているものから切っているわけじゃん。 自分だったら生ものを相手にしている感覚近い。粘土とか。木は木彫室みたいな空調もあって、整えられた空間で、日光も当たらない乾燥もしない室内とか、そういうのに気を遣いながら彫らなきゃいけないから、石よりは生物との対話って感じする。こっちは全然言葉が伝わってこない時あるけど、木の方が生き生きしているなって思う時はあるから、そういう違いがあるのかなぁっていうのを見ながら映像を見てた。
 
(平澤)じゃあ、結構彫刻家にとって素材に太刀打ちできない感覚ってみんな共通してあるものなの?
 
(竹内)それはあると思う。