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監督 齊藤菜々

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音楽を巡る映画祭

この音楽を聴くと思い出すことがあります。
窓から差し込む光の記憶などです。
そしてそこにいるまだ青い私についてです。
その記憶は、たぶん美化されながら、私のもとに帰ってきては去っていきます。
実を言うと、私はその頃に戻りたいです。
未だにこの音楽が手放せない私がそのことを証明しています。
 
音楽を聴くと、ときに鮮明に、それでいてふんわりとした記憶を思い出すことがあります。
それがこの作品を作るきっかけとなりました。
その頃に聴いていた音楽を聴くことは、私の心がまだそこにいることを意味します。
音楽は物理的な場所をくれない。
それと同時に記憶も物理的な証拠をくれない。
だけど、音楽を巡っている間に記憶は巡っていて、その間たしかな居場所が存在します。

監督 齊藤菜々
出演 荒牧冬音
協力 馬場美里

01.


TRAILER

02.


PROFILE

齊藤菜々

東京造形大学 映画・映像専攻 2
 
過ぎ去っていく一瞬を切なく思う気持ちから、映像作品を制作。
 
作品
『自画像』(2022
私の中にある透明な箱を、車の窓と共に語っていく。

 
non title』(2022
1人の人として、1人の女性として、母を捉えたドキュメンタリー。
 
出演作品
『talk』  監督 由良千咲(2023)

03.


REVIEW

瀬戸瑞紀

音楽を聴いているとき、自分のなかに見えてくるもの。
それは、その音楽自体が奏でている景色というわけでもないような気がする。
 
真夏のジリジリとした日差しをうたった歌詞であっても、
その曲を何度も繰り返し聴いた日々が、寒い夜であったら。
いまそれを聴いたとしても、見えてくるのは、凍えそうなバス停の白い蛍光灯だったりする。
音楽を聴いて見えてくる景色は、音楽そのものが見せてくるものとは限らない。
この作品は、そのことについて語っているのではないか。
 
電車に忘れてきたピンクの傘。
それは私しか知らない。
私しか知らない忘れ物を、あの時と同じ音楽を聴きながら、
何度も繰り返し繰り返し思い出しては、
それはもう自分の記憶のなかにしかないのだと、私に言い聞かせる。
 
 


 
瀬戸瑞紀
 
聖心女子大学文学部英語英文学科卒業、同大学院文学研究科英語英文学専攻修士課程退学、東京造形大学造形学部デザイン学科映画・映像専攻二年次在籍。
文学部時代は映画に引用される詩を中心に、ことばの力について研究。さまざまな文学作品や映画に触れながら、「声なき声」や「沈黙」にどのように耳を傾けていけばよいのだろうと考えるようになる。
映画・映像というメディアは、他者という世界がいないと成立しない。自分がカメラをもち、「見る/見られる」、「撮る/撮られる」という行為がどのようなコミュニケーションを現実世界に生むことができるのか考えつつ、作品を制作している。
 

04.


Dialogue

対談
藤田心菜 ×
監督 齊藤菜々


藤田 なんで一緒に対談やろうと思ったのかっていうと、、
 
齊藤 高校が一緒だから!
 
藤田 私たちは高校3年間同じクラスで係が一緒だった。あと、大学受験も一緒に苦しんで、共に戦った仲間だからっていうのもあって。
 
藤田 菜々ちゃんさ、覚えてるのが、高校の時に黒いイヤフォンつけてて聴いてたの。登校するときもつけてたでしょ。そのとき、菜々ちゃんって音楽聴くんだって思ったの。
 
齊藤 聴かなそう?
 
藤田 画面で映像見ながら聴いてる菜々ちゃんは知ってたんだけど、でも、菜々ちゃんが1人でいるとき、イヤフォンつけてるって思って、そのとき何聴いてたの?
 
齊藤 え、そのときってどのときか分かんない!意外と色々聴く。
 
藤田 意外と色々聴くんだよね!それがびっくりした。でも、それ結構みんな知らないよね。周りが知らない菜々ちゃんだけが聴いてる音楽っていうのがあるんだろうなって思ってたから。でもその音楽がどういう音楽か高校の時は知らなかったの。菜々ちゃんがあのとき1人で聴いてた音楽ってこういうイメージなのかなってちょっと考えた。
 
齊藤 この作品で?
 
藤田 うん。
 
齊藤 私が持ってた傘覚えてないよね?赤に白の水玉の傘だったんだけど。それをずっーと使ってたの。だけどこの前その傘を電車に置き忘れちゃって。すごい悲しくて。それを取り入れたいなと思って。
 
藤田 そうだったんだ。なんで傘出てくるんだろうって思ってた。どう取り入れたのその傘を。
 
齊藤 なんかさ、あのときに持ってた傘はもうないじゃん。忘れてきて無くしちゃったからもうないけど、音楽はあるじゃん。だから、音楽の中にはあるの傘が。
 
藤田 なるほどね。音楽って思い出みたいな感じなんだね。
 
齊藤 最初と最後にイヤフォンをつけてる女の子は19歳の私、そのあいだは18歳の私っていう構成じゃん。その18歳の私のシーンは無音なんだけど、飛行機の音と雨の音だけ入れてるの。
 
藤田 飛行機の音とか雨の音とかってさ、音楽と一緒で聞くとあることを思い出すっていうのでイコールになってる。
 
齊藤 たしかに。なんかさ、飛行機の音と雨の音は過去と現在どっちか分からない。
 
藤田 え、どっちか分からない?
 
齊藤 なんか、そもそも雨は19歳のシーンで降ってるじゃん。18歳のシーンでも雨が降ってるの。で、18歳のシーンで雨の音を入れてるんだけど、そこが過去と現在どっちか分からないようにしたかったの。
 
藤田 え、どっちか分からないようにしたかった?
 
齊藤 過去の雨の音か現在の雨の音か。
 
藤田 なんで?なんで、どっちか分からないようにしたかったの?
 
齊藤 過去じゃないから。
 
藤田 え、何が?
 
齊藤 18歳のシーンは過去じゃないよ。過去だけど過去じゃないの。記憶だから今なの。
 
藤田 それはもうちょっと聞きたい話だよ。
 
齊藤 今思い出すとするじゃん。記憶を。それって今じゃん。思い出してるのは今じゃん。
 
藤田 たしかに。
 
齊藤 だからあれは過去じゃないの。記憶だから。音楽を聴いてる時間の流れにしたかったのね。だから、音楽を聴いてるのは今じゃん。19歳の私がずっと音楽を聴いてるっていう。
 
藤田 じゃあ、映像の構成としてさ、19歳の自分、18歳の自分、19歳の自分じゃなくて、ずっと19歳の自分なんだけど、その真ん中の18歳の部分っていうのは、、
 
齊藤 音楽を聴いて思ってることだから今なんだよね。だから、雨が過去にも現在にも出てくるから、雨の音が過去の雨か現在の雨かっていう、そう思ってそうしたの。
 
齊藤 あとは飛行機。飛行機って乗ったことないけど私は。楽しそうだけど、怖いの。閉所恐怖症だから。でも、それが18歳の私が19歳になるのと似てるなって思ったの。大学に行く感じと。
 
藤田 飛行機って進んでるじゃん。楽しいけどちょっと怖さもあるみたいな。
 
齊藤 だし、逃げられらないじゃん。だけどさ、楽しいっていうか、良い場所に行こうと思って乗るじゃん、そうとは限らないけど、でも飛行機って旅行とかで乗るじゃん。だから、将来夢見て大学に行くの。でも、入って逃げられないの。その感じが飛行機みたいだなって思ったの。
 
藤田 分かる。
 
齊藤 だから、過去と現在を繋ぐものと思って飛行機の音を入れたの。雨の音も飛行機の音も過去か現在かっていう。


 
藤田心菜