音楽を巡る映画祭
カワセミに心が踊ることが少なくなった。
嘘の輝き。
誰かの空想。
つぎはぎで作られた幻の都市。
何でもないであろう遠くの景色は、どんなところか妄想するのが楽しい。
近所のエキゾチカ。
人外魔境、広がる偽の景色。
だんだん時間が経って
あの世界は近所になっても
知らないままでいたいし
見慣れないままのあの
不思議な場所であって欲しい。
本当は何でもないであろうそれに心底驚いていたい。
今回、私はエキゾチックサウンドを巡るショートムービーを作成した。
”エキゾチック” 日本語では異国趣味、異国情緒と訳される。西洋から見た東南アジア、アフリカ、日本のイメージ。または、私の住む日本から見る異国への妄想など。知らない異国に思いを馳せた人々のなんちゃって異国像。楽園のように思えるそれらの世界は、実際には存在しない場合が多い。残念ながらNINJAやSAMURAIはもう現実にはいないのだ。恐らく、ジャングルの秘境やまだ見ぬアラビアの美女も根も葉もない人々の作り話である。
私たちが時たま感じるエキゾチックは、色々な国の特徴が混ざり合っている。例えばハリウッド映画に出てくるような日本の風景は、夜中の雨が降りしきる上海とネオン街をつぎはぎしたような東京。知っているのに存在しない妄想都市だ。
SNSで簡単に世界と繋がれるようになった。世界中の人々の異国に対するイメージや知識は、以前よりも格段に現実に近いものとなり、エキゾチックな偽の景色は、本当に幻となってしまうのかもしれない。
それでも、世界のことなどまるで知らなかった、幼い頃のように。現実に対する解像度が上がり、はっきりと見えてしまったとしても、ぼやけたままの風景をどこかに。
存在せずとも、人々が作りあげたエキゾな世界で流れる音楽や風景にワクワクさせられる。
出演 福佐仁
声の出演 大橋正芳
土屋昭雄
金太郎
撮影 小笠原航太 土屋昭雄
special
thanks 皆川野原
福佐恵
矢野恵生
小笠原友香
孫佳奈
01.
TRAILER
02.
PROFILE
小笠原航太
2003年生まれ千葉県出身
テキスタイルデザイン専攻
instagram: @iamogaaaaa
15歳から演劇を始める。俳優、演出、衣装など担う役は様々。スタイリストを目指し、服を素材から考えテキスタイルを主に扱う。
2023年「Dance@30fps」にてキュレーターとして活動開始。近日、自身初となるグループ展示に向けて作品を制作中。
趣味でパッチワークをしている。
03.
Dialogue
対談
飯名尚人 ×
監督 小笠原航太
Q.最近感じたエキゾチック
飯名 最近感じたエキゾチック?
小笠原 僕1個あって。マツケンサンバってめちゃめちゃエキゾチックだと思うんです。
飯名 あー確かに(笑)
小笠原 マツケンサンバⅡを最近よく聞いてるんですけど、あれ歌詞すごい適当なんですよ。最初から"叩けボンゴ 響けサンバ"
飯名 そもそもサンバだし
小笠原 ボンゴって全然サンバ関係ないらしくて。さらにマツケンが将軍みたいな格好して…
飯名 金色の着物を着てちょんまげして…
小笠原 芸者風のダンサーがいて…何あれ?ってなるのですよね。
飯名 わけわかんないよねえ
小笠原 わけわかんないけど、すごく元気になるのと、僕はマツケンサンバのイントロになんか悲しくなる…
飯名 旅愁みたいなものがあるんじゃない?
小笠原 確かに擬似異国旅行のような感覚。旅愁はあるかもしれないですね…。あと、マツケンサンバの映像編集おかしいんですよ。文字とか、わざとやってるんじゃないってくらい…こう…ダサいんですよねえ(笑)
飯名 わざとなんじゃない?最初はわからないけど、だんだんキャラクター化してきてさ。
小笠原 気持ちよくなっていったんですかねえ。
飯名 こういうのを見ると思い出しちゃうんだけど、超合金ロボって流行ったのよ
小笠原 ガンダムの前…マジンガーZみたいな?
飯名 コンバトラーVとか…70年代のアニメで超合金っていう名称のおもちゃがあって。トランスフォーマーとかもそうだけど、あの世界観はなんかマツケンサンバと似ていて、足し算していったら得体の知れない形になっていって、でもそれがおもしろいっていう。
小笠原 色味とかもすごいですよね…アバンギャルドというか
飯名 色味もそうね。
小笠原 テキスタイルって色味とかコンセプトがすごいというか。自由度が高い上に色々なものを足し算しがちで、多分他の学科から見たら、わけわかんないモチーフの足し算をしてるように見えると思う。でも服とかになったらわりと綺麗に見えたり、服の受け皿も広いから、少し何でもありなとこがありますね。
飯名 日本の着物も柄の着物に柄の帯を当てたり、普通だったら組み合わせないような柄オン柄をやってもそれが粋だったりで、でもデタラメに足し算してるかっていうと、そうじゃなくて一貫するセンスを感じるよね。
小笠原 僕は小さい頃のヒーローがヤッターマンで、タツノコプロ大好きなんですけど、そこらへんってその系譜がありますよね。
飯名 あるね。
小笠原 そういえば最近気づいたんですけど、ガンダムとかヤッターマンのメカニックデザイナーの方が造形のテキスタイル出身なんですよね(笑)
飯名 そうなの!?すごいじゃん。
小笠原 全然分野が違うじゃんって(笑)
飯名 いいルーツというか、いい繋がりがあるね(笑)
飯名 もう今はないのかもしれないけど、歌舞伎町にロボットレストランって昔あったの知ってる?
小笠原 へー!初めて聞きました。
飯名 ロボレスって言って、お客さんは食事をしながら、コスチュームが宇宙っぽい、近未来っぽいロボットと女の人が踊っていて。でも秋葉原のコスプレとは違って、ダンサーたちはちゃんと訓練したダンサーなんだよね。ロボットの世界観をエンターテイメントにしたっていうのが一時期あって、外国の人達は喜んで見てた。場所も歌舞伎町にあって。既に歌舞伎町は和洋折衷でチャンプルー状態だし。
小笠原 なんかそういうのって訳もなく楽しいし。これもマツケンサンバ的なのりですよね
飯名 意味がなくて良いよね。
小笠原 こういうものって外国人の想像する日本のエキゾチックを逆手にとって、観光客向けでありつつ、日本人にとっても馴染みのない風景だから日本人も面白がっているのが、異質ですよね。
飯名 日本の中の更なるエキゾチック。そこがおもしろいよね。
イタリアン
小笠原 日本は島国だから異国への憧れは強いのかもしれませんね。
飯名 長崎に卓袱(しっぽく)料理っていって、和洋折衷で、オランダ、日本、中国が混ざっちゃったような料理で、もうどこの国の食べ物か分かんないっていう感じ。それはやっぱり面白いよね。
小笠原 全く違う何かと何かを平気で混ぜちゃう。
飯名 名古屋にイタリアンっていうパスタがあるらしいよ。
小笠原 へえ~!?(笑)
飯名 ナポリタンっていう名前ももうすでにすごいけどね。
小笠原 ナポリタンのさらに亜種(笑)
飯名 イタリア人も知らないイタリアン…。でもそういう発想がすごい面白い。妄想の賜物っていうか。
小笠原 悪趣味が許される場所って凄いことが起きるんだなって。
飯名 ネジがちょっと外れてる感じもあるよね。悪趣味が正当化されていて、もう意味も何もなくて、快楽しかない。そういうのは何の理屈もいらないじゃない。デタラメであればあるほど面白い。
小笠原 マツケンサンバを聞いている時、理屈は確かにないですね。
飯名 ないよね。だからマツケンサンバをアカデミックに考えることすらもう意味がない感じがするじゃない。本当にただの偶然っていうか。もしかしたらスタッフの悪ふざけか、ひらめきか。
小笠原 今回僕の映像の中にも、意味があって入れてるシーンもあるんですけど、全く意味のないお爺ちゃんの声とかひらめきで入れていて、それが楽しかった。
飯名 小笠原の作品を見たら、エキゾチカっていう音楽のジャンルが今回テーマだけど、普段自分が見ている物の中にある異国情緒っていうか、ちょっと違うセンスで見てる感じがあって、確かにエキゾチックな感じがした。日本にはない植物が生えてる感じ。
小笠原 もうある程度年齢がいくと、本当にある世界のジャングルとかヨーロッパって意外と知識として知ってしまうから、こういうトリッキーなものじゃないと、もうあの感覚って味わえない。
飯名 インターネットと今は映像があるから行ったことなくても、その国のことを知ってしまう。だから、そうするともっと知らない文化、本当にカルチャーショックを受けるところってどこだろうみたいな事はあるよね。
異国とは何か。
飯名 金子光晴って詩人がいて、大正時代にヨーロッパに行く話なんだけど、当時のヨーロッパの風景なんて多くの人はほとんど知らないと思うんだよ。金子光晴は自分の異国体験を詩とか小説にしていくわけなんだけど、そうすると言葉のイマジネーションによって読者が勝手に想像して妄想で補完して頭に描いていく。それで異国のイメージっていうのはまた増幅されていくんだと思うんだよね。
小笠原 すごい壮大な伝言ゲームの結果なんですね。
飯名 正しさは求めないんだよね。それが面白いんじゃない?
小笠原 人間は嘘をつくことができるし、嘘を信じられる生き物で、進化の歴史の中で嘘をいう奴とかって一見排除されてもいいようにも思えますよね。
飯名 嘘による妄想を楽しんでるけど、知識の無さによる差別が生まれたりもする訳で、そこは難しいとこだよね。
小笠原 ある意味エキゾチカ的なものは、人間の虚構を信じられる性質のいい発散場所な気がしてます。
飯名 首狩り族とか。もしかしたら人の肉を食べることもあったのかもしれないけど、別に人の肉を食べて生きてるんじゃなくて、何か特別な儀式としてそういうものがあったり、そういう風に見えただけかもしれない。それが妄想として輸入されてきて、どこどこの未開の地ではこういう人たちがいる、みたいにグロテスクなところだけがピックアップされているのかもね。
小笠原 ちょっとそういうファンタジーみたいなものが、世界のどこかにあったらいいなって思ってしまう部分もあります。
飯名 それもあるよね。未知の文化に対する憧れ。
小笠原 ビックフットいないかなあ。
飯名 エキゾチックサウンドは、そういう妄想の風景を音楽にしたんでしょう?だから、実際にあるかどうか分かんないユートピアっぽい感じもする。そういう世界があったらいいなっていう。
小笠原 うんうん。
飯名 小笠原の作品は、音楽じゃなくて映像だから写実的に撮影したものや風景が見えちゃうけど、デザインとか構成のされ方によって、実はあの風景はどこにもないんじゃないか、誰かの妄想なんじゃないか、あるいは誰かのユートピアなんじゃないかみたいな感じはちょっとある。
小笠原 ユートピアみたいな、何かポジティブな物ってやっぱり見いだしづらいから、僕はヤッターマンを見てた時から、ずっとここらへんの嘘っぽいものによりどころを感じています笑。嘘だって分かりつつ、それを腹の底から信じてる時間がとんでもなく幸せだったりする。
飯名 リアリズムの心地よさとは全然違って、ユートピアには祈りのようなものもあるよね。妄想だけど、ある理想を持っている。
対談音声 前編
対談音声 後編