森を巡る映画祭
撮影・編集
猪野城司
撮影地
喫茶「樹樹」
森とは、ある程度自然なもの。
我々が観測する以上、完璧な自然とは呼べないが、我々さえいなければ森は自然である。
「人為的でない」と表現する方が適切だ。だからこの映像は面白くない。森だって面白くない。それらは人為的でないから。
もし森に、この映像に面白さを見出す人間がいるというなら、それはあなたのことだろう。
真っ白な教室の中に、私が一人佇んでいて、空中を手で掻き分けると草葉がしなる音がする。鳥の囀りや川の流れるのが聞こえて、確かにそこは森だ。
平たい床である森の地面をザクザクと進んでいく私は、木々の声を聴き、存分に森を堪能するのである。
……そんな時、耳元で大きな虫の音がした!最悪だ!私は大の虫嫌い!うわあ、やめてくれ!
気がつくと現実の森で私は虫から逃げ回り、前方のガイドに呆れられ「何やってるんですか、ほら、行きますよ」と声をかけられる。尻餅をついた私は「え〜、まだあるんですか……?」と呟き立ち上がって歩き出す。
という映画を最初は撮ろうと思っていました。「森を巡る映画祭」ならではということで、自分の作品では森からちょっと抜け出して、皆さんに休憩して欲しいなという目論見です。ガイドの放つ「何やってるんですか」はその作風に対する自虐的なセリフだし、「まだあるんですか」は他の作品をちょっと皮肉った趣味の悪いセリフです。森の映像がいっぱい続くんだろうなあと思い、そういったセリフを考えました。
しかしながら、ふと冷静になって私は考えます。「森を巡るというのはどういうことだろう」と。
プロフィールに記載した通り、私はエンタメしか作りません。人為的な面白さです。
ですが森とは、その広くが人為的なものではないのです。
その考えに至った時、全て作り直そうと決めました。
斜に構えたプライドを捨て去り、限りなく自然なまま、絶対に面白くない映像を撮ってやろうと思いました。
鳥が好きな時に囀るように、私も好きな時にカメラを回しました。バイト先の喫茶店「樹樹」へ向かい、働き、まかないを食べ、帰る。その断片を写しただけの映像です。
「樹樹」って店名も、そういえばかなり森っぽいなと思い始めると、なんだか身の回りにも森っぽいものがあるような気がして、それらをカメラに収めてみました。本当に、ただそれだけの映像。あなた方のことを一切考えず作った、私だけの小さな小さな森……。
さて、これが私の「森を巡る」です。面白くないでしょう。
02.
PROFILE
猪野城司
2003年4月2日生まれ。
中学では生徒会長、高校でも生徒会長、大学で自治会長を務める目立ちたがり。
特技は小説を書くことで、小説投稿サイトにて現在SF小説を掲載中。
自らはエンタメに傾倒し、面白くない作品は絶対に出さないという斜に構えたプライドの持ち主。
チームで制作する場合、一切の妥協を許さず作品の面白さに一人だけ全力を注ぎ始めるため、チームメンバーとの軋轢が生まれやすいことに少し悩んでいる。そのためグループワークが苦手。
シナリオライターをメインに、あらゆることを一人でこなせるマルチクリエイターを目指している。