生跡の杜
監督 伊藤 奈津(イトウ ナツ)


 
 

森を巡る映画祭

出演     
  ⿓之介

撮影協⼒
清野瑞稀


美術協⼒
伊藤靖         

伊藤由紀

Special thanks
飯名尚⼈

由良千咲

監督・編集
伊藤奈津

私にとって森は、癒しであり、静けさであり、思い出である。
私はよく、家族と森へ行く。家族のことを考えるといつも、サラサラと揺れる草木の緑が情景の中に入り込んでくる。森の中にいるだけで、いつもより素直な自分がいる気がした。
 
森の中の植物たちは、陽の光を目指して懸命に根やツルを張り巡らせ、太く、強く、生きようとする。草木が生い茂る中、ひときわ目をひく大木たちはその象徴であろう。私はそんな姿に魅了され、心のどこかで憧れを抱いている。
 
そんな揚々と育つ木々の下では、日光を遮られた若木たちは枯れ果て、倒れている。空に一直線に伸びる竹の下では、細々と何本もの竹が覆いかぶさり、影でひっそりと生きている。長い時を経て熟した果実は、やがて地に落ち、飢えた虫や動物たちの待ち望んだご馳走になる。体の中を流れる生あたたかい血液を欲して、私の隙を今か今かと待ち望んでいるヤツが、周囲に群がる。
森の中ではみな、生きようとする。
 
どんなに必死に生きていたとしても、生存競争の波に呑まれ、散っていく。儚く散っていった自然界の死を、作品の中で形として残したい、弔いたい。そう考えた。
 
 


あらすじ
主人公の男は眠りから覚め、森の中へ入っていく。深緑に染まった草木が生い茂る中、枯れ果てた草花や、虫に喰われた果実に惹かれ、拾い集めていく。丘の上に、拾ってきたものたちの為の小さな古墳をつくる。祈りを捧げ、竹林の中で踊る。弔いが終わると、男は再び森の中へと消えていく。
 
 
作品について
映画の舞台「谷津山」は、私が地元に帰省した際に、父につれられ訪れた場所です。この場所には、古墳時代前期、古代の駿河の国で最大の古墳がありました。人が設けた巨大な人工物の上に、長い年月を経て植生が生まれ、森ができたのです。「古墳の上にできた森」そこから着想を得ることにしました。眠りから覚めたかつての権力者(古墳の主)を主人公の設定としておきました。古墳とは、本来地域で多大な権力を誇った者が、死んだ後も自分の力を示すために作られたものです。しかし、この作品では、懸命に生きた末に儚く散っていった命を弔うものとして用いました。かつての権力者が、現代において散っていった弱き命を弔う。そんな物語を描きたいと思いました。
 
この作品では、私の地元の魅力が組み込まれています。地元で友を募り、撮影を行いました。映画の後半で組み込まれている舞踊は、静岡で毎年行われる「清水みなと祭り」で踊られているものです。地元の人々であれば、一度は踊ったことのあるような馴染みのある踊りとも言えるでしょう。出演者はもちろん、私自身、幼少期に毎年のように踊った懐かしい思い出があります。土地性を生かした作品づくりを心がけました。

02.


PROFILE

伊藤奈津

2003年⽣まれ 静岡県出⾝
東京造形⼤学 映画・映像専攻3年 在学中
 
https://www.instagram.com/nat_summer_110
 
流れて⾏く時間の中で、今しか感じることのできない⼼情、⾒ることのできない周囲の姿を、作品として残していきたい。そんな気持ちから、映像作品を制作中。
今後はさらに、劇映画、ドキュメンタリー、インスタレーションと幅広く学び、挑戦していきたい。
 
2022
『待ち合わせ』 課題作品:16mmフィルム
『表裏⼀体』 課題作品:ショートフィルム
『nontitle』 課題作品:ドキュメンタリー
 
2023
『Myhome』 ⾃主制作作品:ドキュメンタリー
「バカバカバカンス」 映画・映像専攻有志展・上映会
『はたちの唄』 課題作品:劇映画
『空席』 出演作品:監督 志⽥愛莉