STJプロジェクト(タスマニアの伐採を止めるための何時でも、何処でも、誰でも参加できるアンケート集め運動)を皆様に呼びかけた、言い出しっぺの写真家の平野正樹(国境なき写真家旅団)です。
1991年のモスクワから撮影を始めた『DOWN THE ROAD OF LIFEシリーズ』の一環として、2001年にJATANのオーストラリア・タスマニア視察旅行(CSTJ事務局長の麻布大学の原田公先生も一緒でした)にロケハンを兼ねて同行させて頂いたのが始まりです。
スマニアでは高さ約90m、重さ数百トン、直径約4m、樹齢400年、なんと徳川家康とか関が原の戦いの頃に生まれたオールドグロスの原生林が私達日本人が使う紙の材料として100トン当たり約6万円(植林木より10数%安く設定されている、現地NGO情報)で伐採され、その90%近くが日本に紙の材料として100トン当たり45万円(現地NGO情報)で日本にウッドチップとして売られている事実を初めて知りました。

美しいオールドグロス原生林の森の中に散らばる伐採現場で6週間の巨大切株上で一人で撮影していると今迄のように撮ってプリントして個展と印刷物で発表してハイ「終わり」次行こう!という訳には行かなくなってしまいました。

「不思議な国のアリス」を思い出させる美しく巨大な森が私達日本人が使い捨てる紙になるなんて知らなかったとはいえ、日本人として恥ずかしいし、知ってしまったからには原生林の伐採を止めるために、本業ではないけれどこの伐採を止めるために日本に帰って一肌脱ぐっきゃないと決意した次第です。
「沈黙の森-タスマニア」展示は東京都写真美術館の「風景論」で発表しました(2002年、写真美術館収蔵)。しかし、タスマニア原生林伐採を日本の人々に伝たえ切ったという実感はなく、その後国境なき写真家旅団出前展と称して3.5m×3.5mの樹齢400年の切株写真を別にプリントし、これはと思う人に見せる活動を一人で始めました。
どうやらこれが今思うとCSTJプロジェクトの始まりだったようです。

出前展を続ける中で趣旨に賛同してくれる芸術家集団the art.pubが生まれ、Dance and Media Japan / Tokyoが協力を申し出てくれています。
CSTJプロジェクトは三年間の限定プロジェクトです。
何故限定かというと今のペースで伐採が進めば3年後には守るべき森が無くなってしまうからです。
私達に時間的な余裕はありません。

何時でも、誰でも、何処でも参加出来るCSTJプロジェクトへの協力をお願いします。

[profile]
写真家。国境なき写真家旅団主宰。写真集『DOWN THE ROAD OF LIFE』(2000年)。

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芸術における社会性を考えてみると、企業の社会貢献事業、NPO法人制度の拡張など、インフラ作りに関するニュースが目立つようになってきました。ところがその一方で芸術表現は社会や政治に背を向け、内省的な表現が主流となり、個人的には「物足りない」ものが増えてきたなぁ、と・・・、思っていたときに、平野正樹・国境なき写真家旅団の写真を目にしました。報道写真でもなく、純粋芸術のための芸術写真でもない作品群は、「物足りなさ」を充実するものでもありました。

その中で、ギャラリーの床一面に敷かれた「沈黙の森-タスマニア」と題された一枚の巨大な切り株写真は、「これはタダゴトではないな」と思わせるメッセージをじわじわと発してきました。
聞けば、樹齢400年のユーカリの原生林の切り株の実物大の巨大な写真。黒い染みは人工的に焼いた跡で、伐採された切り株はかなりの割り合いで日本に輸出され、コピー用紙やらなにやらの消耗用紙になっているとのこと。しかも、紙になるまでのどこかのプロセスで原生林チップと植林チップとがブレンドされて市場に出回るため、消費者は知らず知らずのうちに、タスマニアの原生林伐採に加担していることになる・・・。

被害者か加害者かよくわからないように仕組まれている社会構造の中で、倫理観の麻痺が引き起こす様々な問題は、どのように解決すべきなのか。どういったコミュニケーションして、どうやって広く様々な人にこの問題の「ヤバさ」を伝えられるか。芸術と報道、そこに関わる人々の道義や倫理、様々な問題がこの活動には含まれてくるでしょう。

[profile]
Dance and Media Japan ディレクター、キュレーター。メディア全般と舞台芸術を重視したワークショップ、イベントを各国で開催している。 www.dance-media.com
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青い空、青い海、澄んだ空気、緑の山々、美味しい水、親切であたたかな人々・・・それがタスマニアに対する私の印象です。
数年前、ほんの数週間の観光旅行のつもりでタスマニアを訪れましたが、その自然の豊かさと美しさにすっかりハマってしまいました。
その後数ヶ月間にわたりタスマニアに滞在、タスマニアの海や山や森の素晴らしさを堪能しました。
しかしあの豊かな森が、着実に切り開かれていることを知ったのは、日本に帰国した後です。
タスマニアの原生林から切られた木々を日本人が紙に利用していると知った時のショックといったら!
何か自分にもできることがないかという思いから、チップストップ・タスマニア・ジャパンに参加しています。
これからも少しずつ、いろいろと勉強していくつもりです。
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now printing
だからタスマニア…。
どんなイメージがありますか?
ある人は映画「タスマニア物語」を思い出すかもしれません。またある人はタスマニアンデビルを思い出すかもしれません。
もしかするとえっどこそれ?と思う人もいるかもしれません。
でも、きっと「焼け野が原」や「はげ山」をいきなりイメージする人はいないと思います。
確かに、タスマニアはとても綺麗なところです。類まれな美しさや、自然の厳しさが感じられます。きっと、山歩きの好きな人は気に入ることでしょう。 そんな綺麗な土地に行くと貴方はきっとどこかで「焼け野が原」を見るでしょう。その風景に唖然とするとともに、道一本隔てた逆側の風景の美しさに感動することでしょう。 タスマニアは類まれな美しさの自然を持つとともに、類まれなる愚かさせでその自然を破壊しています。
その破壊はある国の経済的需要によって支えられてきました。
ある国……それは日本です。破壊者は私達に日本人であり、日本の企業です。 経済的需要・……それは紙です。私達は日常的に大量の紙を使用しています。 紙を作るにはパルプと呼ばれる繊維が必要です。
ではパルプは何から作られるか・・…
木です。森林です。 木を伐って、チップ状(細かく砕いて)にして、それを更に加工することでパルプを生産し、紙が出来上がります。もちろん再生紙ではなく、新しい紙を作った場合です
が。 チップ上のものを木材チップと言います。木材チップは海外から輸入されています。
そして、その40%がオーストラリアからです。 オーストラリアが輸出している木材チップのほとんどがタスマニア州からのものです。
はじめに私達が破壊者だといった理由がこの量の大きさなのです。 タスマニアの自然は綺麗なだけでなくて、世界で二番目に高い広葉樹があったり、世界でここでしか採れない種の木があったりと非常に貴重なものが多くあります。 たかが紙のためにこれらを破壊してしていいのでしょうか? たかが紙といっても、紙がなければ僕達は仕事ができません。本が読めません。写真も見れません。 だから、紙を否定はできません。 でもこの愚行にも手を貸したくないし、肯定できません。むしろ他の方法が考えられるのだから、それに乗り換えていくべきだと考えます。 なんというかまとまりがなくなってきましたが、このままにしたくないのです。今、この問題を日本の人に知ってもらう。それによって少しずつでも変えられるのではないかと思うのです。