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悲喜劇を巡る映画祭

「ももと脱毛」
藤井 美穂



作品解説
 
この作品は、私が思春期に体毛について言われた言葉に対する、当時の感情をもとに制作をしています。
見た目が女性であるというだけで、毛が生えていることは可笑しいと言われた悲しさや理不尽だと思ったことについて制作をしました。
 
冒頭の体毛を愛でる様子は現在の私の価値観を表現しており、毛が生えていてもツルツルでも、本人が満足しているのであれば、他人の身体なのだから何でも良いじゃないか。というメッセージを込めています。
蝉の鳴き声から先は、私の過去への記憶や、感情が遡る様を表現しています。
桃の産毛を剃る行為が、当時の体毛を剃るか否か悩んだ私と重なっていき、境界線が曖昧となる様を表現しています。
また、体毛が生えていても良いでは無いかと思いつつも、体毛がない身体に憧れる、また、肯定したくても心のどこかで自分の身体を恥じている様子をここでは表現しています。
後半ではそんな恥を心のどこかで感じ、毛に執着をして剃っていた桃に被りつき全て食べてしまうことによって、そんな自分を「咀嚼する」という行為を通して受け入れ、肯定しようとする様を表現しています。
 
この作品の悲喜劇は、
 
悲劇性…自分が傷ついた過去や経験
 
喜劇性…このテーマを「もも」という愛らしさを連想させる果物で表現をしたこと
 
どんなに悲しかった過去でも、作品としてこの話を消化しようと思えたことや、自ら受け入れて話せるようになったことがこの行為こそが喜劇です。
 
 
 

プロフィール
 
藤井美穂(ふじい みほ)
 
2001121日生まれ。
20204月 東京造形大学、グラフィックデザイン専攻入学
 
普段は人とコミュニケーションを取ることや妄想をすることが好きな為、自分の妄想を1番正確に伝えてくれる動画作品を今年の5月から制作し始めた。
これから卒業研究も控えている為、この作品を通して改めて、映像の撮り方をしっかりと勉強しなければと危機感を覚え始めた。
 
 

作品批評
 
竹内 優美香
東京造形大学映画映像専攻2年生

冒頭、体毛が生えている肌と体毛が剃られている肌をさするというシーンが繰り返し流れる。これは、後に続く映像の少女の体毛に関しての過去の出来事の理不尽さと過去の理想を表しているのではないだろうか。背景がピンクであることと、桃というモチーフが女性らしさを象徴しているように受け取れる。「女なのに」という言葉が女性らしさを強要されることへの理不尽さを表しているように見える。この作品において、理不尽さが悲劇性を表しているのではないだろうか。また、少女が桃をずっと剃り続けているという不思議さと執着さが喜劇性に感じる。最後の「本人がそれでいいならいいじゃないか」という語りが作者の伝えたいことのように感じた。

対談

和田あやか(東京造形大学グラフィックデザイン専攻3年)
藤井美穂(本作監督)


和田
「桃と、女性に毛が生えていることを掛け合わせているのが面白いと思いました。」
 
藤井
「そう言ってもらえると嬉しい!
桃っていうのが、桃尻であったり理想的な人間の身体を表す表現として使われることがあるので、桃を使いたかったというのと、桃も血も同じ暖色系の色だけど、与える印象が全く違うのが魅力的だと思って。」
 
和田
「成る程。あと、桃の皮が捲れるときの痛々しさも感じられたよ。」
 
藤井
「そうなの。私も皮膚が捲れてしまった様な印象を桃に抱いた!」
 
和田
「桃を最後に食べたのはどうして?」
 
藤井
「桃を過去に見立てることによって、最後に桃を咀嚼をするという行為が、過去を自分の中で咀嚼して飲み込んでいる様子を表現したかったんだ。
今回は過去を受け入れ、時間をかけて咀嚼をして飲み込み、作品として周りに発表をすることが出来るようになった、心の回復を喜劇だと捉えていて。」
 
和田
「確かに!嫌なことも人に話せる様になったらそれは喜劇に変化していくよね。」
 
藤井
「ね!なんか言える様になったら一皮剥けたみたいに、成長もしたかな?とか思ったり!」
 
和田
「あと、こちらをじっと見ている姿も印象的だったな。」
 
藤井
「そうだね、過去をじっと見つめ直して目を逸らさないでいたい。という気持ちが表現出来たら良いなと思いました」
 
和田
「最後の方にお風呂場に落ちた桃の果肉が映ってたのはどんなメッセージがあったりするの?」
 
藤井
「私としては、どんなに過去を咀嚼したいと思っていたとしても、やっぱりモヤモヤは残っているわけで。それがこうして作品として消化したいという思いにも繋がっているから、どんなに過去を咀嚼して消化しようとしても、しきれない取り零してしまう部分があるっていうのを、あの桃を映すことで表現したくて。あやかちゃんはこういう想いはあったりする?」
 
和田
「そうだね、私は女性というものから解放されたいからボーイッシュな格好をするけど、やっぱり周りの目を気にしてしまって毛を剃ってしまうわけで。
最後のどっちでも良いじゃないか。という言葉が響きましたね。
やっぱり他人の目を気にしてしまって。」
 
藤井
「今思ったんだけど、あやかちゃんは女性という性から解放されたいとボーイッシュな格好をしたり、周りの目が気になって毛を剃っていて、私は女性に見える様な所謂ガーリーと言われるような格好をしていて、でも冬だから見えないだろうと毛を剃っていなかったりして気づかなかったけど対照的な2人なんだね。」
 
和田
「本当だ!でも、本当に毛を剃るってめんどくさいよね。
脱毛も高いし、勝手に抜け落ちないかね。
周りに見た目のことを言われない世の中になれば良いよね。」
 
藤井
「そうだね、個人で思うことは勝手なんだけど、それを他人に押し付けないでほしいよね。
美大みたいに良い意味で他人に無関心な人が増えると良いよね。」
 
和田
「そうだね、美大は相手がどんな格好してようと大して気にならないし。」