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(空間)と(平面)を巡る

向かう。
杉浦武巳

 


東京造形大学 造形学部 デザイン学科 メディアデザイン専攻

作品紹介 
 
今作品は「向かう。」というタイトルをつけたが、これは、投影されたアニメーションのタイトルをそのまま付けた。カタツムリ・動く骸骨のイラスト・切り貼りされた花などが投影された風景を3分間流し続ける映像である。壁や空間、空に平面のアニメーションを映し出したことで、空間と平面の関係性は干渉しあい、それぞれの側面からお互いの演出を助け合っているように感じる。
 薄暗くて人工照明の光る、涼しい空気感を持つ空間内に平面が投影され、穏やかで静かな雑音が流れる。投影されたそれは平面でありながら空間を演出し、空間の一部になる。そして平面=移り替わるアニメーションは、この空間に投影されたことで、この空間の空気感や涼しさを映像の中に取り組むことができる。
 私たちは普段、空間の中に平面を感じることはできないが、今作品では空間の中に露骨な平面が存在している。関係性は「空間>平面」であるがそれが同時に存在していることで、画面内ではそれぞれが演出を助け合いながら静かに時が進んでいく様子が観察できるのではないかと思う。
 投影された映像は単なるアニメーションだが、空間と平面が相互に影響し合い、生まれる世界には非日常的なものがあり、それを映画の中で感じてもらえたらと思い制作した。

対談「空間・平面の演出や表現について」

 
メディアデザイン専攻に所属する私たちはポスターやwebサイトなどの広告を制作する。そして現在、私がもっとも力を入れている学習に3DCGという分野がある。今回は同じく3DCGの勉強に励む東京造形大学 造形学部 デザイン学科 メディアデザイン専攻の今井龍太郎さんと、映像やゲーム・プロジェクションマッピング・VR、様々な分野で発展する3DCGを学習する上で、私たちがそれぞれ空間・平面の表現をどのようにとらえ、制作を進めていくのかを対談する。
 
杉浦「今回は空間と平面の表現についての話だけど、今井君は今のところ両方の表現に触れてる感じがするね。コンセプトアート、3DCG、イラストなどなど。まずはコンセプトアートについて教えてほしいなと思います。コンセプトアートを描こうって考えた時って普通にイラストやキャラクター等々を描くときと考え方は違う?」
 
今井「コンセプトアートは完成したものを・映像作品、小道具、3DCGに起こす前提で作ると思うんだけど、だからこそ、素材や形の凹凸など現実のものとして破綻しないようにすることが大事だと考えてますね。その点、イラストを制作するときには現実的な破綻も許されるし、むしろそれが二次元の表現のいいところだと感じる。」
 
杉浦「現実的か空想かみたいな話か。確かにリアルな空間に起こすなら細部が大事だね。やっぱり、コンセプトアートは平面だけどその中で空間が見えるようにすることが重要なのかな。じゃあ2Dと3Dの作品を作る時の明確な違いは何だと思いますか。」
 
今井「自分はメカニックや無機物を作るんだけど、立体を作る時に面と面の堺を明確にキッパリさせないことを意識してるかな。現実にそんなものはないっていうし。これはイラストとの違いでもある。ベベル(CGソフトにおける辺の角を取るツール)の様な作業が必要だと思う。」
 
杉浦「現実に起こした時に破綻させないって話に繋がってそうだね。そもそも何でCGに興味があるの?」
 
今井「2Dと3Dの違いの面白さがあるからだね。平面の表現はフィクションだけど、空間表現は現実的な要素が多い。さっきも言ったように現実的に破綻しないものを作りたいっていうのがある。デッサンや3DCG制作をしている時に平面と空間の表現の違いや現実と乖離しないものを考えるのは刺激があって面白い。」
 
杉浦「じゃあ今井君がこれから空間演出を考えるならどんなものを作りたい?」
 
今井「現実にあるものが動くと3D空間に反映されるような、インタラクティブな演出考えたいなってざっくり考えてるかな。」
 
杉浦「3D空間で自分の作ったモデルや演出が現実の人間と相互に影響しあうのは確かに面白いし、大学で学んでいることと関連付いているから楽しそう。完成したら見てみたい。最後に、私が制作した映画についての質問なんだけど。今回の作品ではプロジェクションマッピングや映像を空間に投影することを想定して、その光景を映像化したんだけど、これは空間表現と平面表現のどちらにあてはまると思う?」
 
今井「平面表現にあてはまるのではないかと。実際に完成した成果物が映像だから平面表現にあてはまるんじゃないかなって理由で。実際に地上でプロジェクションマッピングを見るのとそれを画面の外から見るのでは全然違うものに感じるんじゃないかな。映像ならば編集や加工によって観客の視線を誘導したり、演出の見せたい部分に注目を集めたりすることができるけど、実際に地上から見る場合は気候やその他空間にある別のものが演出を阻むこともあるからね。想定したものが想定した通りの効果をもたらすとは限らないし、空間と平面ではコントロールできる要因に差がある。だから今回の作品は、どちらかというと空間演出を再現した平面表現ではないかと思う。」
 


以上の「空間」と「平面」にまつわる話題をふまえ、今回の映画に批評をいただいた。
 
 
 
 

批評

 
今井龍太郎
東京造形大学 造形学部 デザイン学科 メディアデザイン専攻
 
 
 「途中で入る影を持ったプロジェクションマッピングが現実であるととても面白いと感じました、現実で行ったら光なのでそれに類する質量はないはずのプロジェクションマッピングに影という質量を与えたらより現実味をあたえられるというのは面白い発想だし、空に映像を映し出すマッピングも現実で行うには質量がある壁などに投影しなければいけないので難しい。しかし映像作品ならそういった制限もなく投影できるし、技術の進歩が進めば空気中のチリや分子を足がかりに投影できるかもしれない挑戦的な作品だと思いました。」