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(愛)と(言葉)を巡る

love letter
櫻井薫



 
監督・撮影・編集 櫻井薫
協力 仮谷玲奈・松永薫・久保田麻希・吉川侑那 
出演 きょ・國分雄太


 
愛するひとへ
 
元気ですか?私は元気です。
最近あなたのことが好きで好きで堪らなくて
時々寂しくて泣いてしまうことがあります。
この気持ちはどうすればいいですか?
会いたいのにすぐに会えないことがとても辛いです。
早く会いたいです。
 
でも、まずはあなたに伝えたいことがあります。
私はあなたに出会って人生が変わりました。
信じられないかもしれないけれど本当に毎日が豊かになりました。
あなたがいない人生なんて考えられません。
あなたのおかげでいつも頑張ろうって思えます。
感謝でいっぱいです。ありがとうございます。
 
私はあなたの全てが大好きです。
あなたの顔も声も仕草もあなたが綴る言葉も何もかも。
あなたが笑っていてくれれば、幸せでいてくれれば、それだけでいいのです。
 
でも、それ以上を望んでしまう自分もいます。
あなたに私のことを知って欲しいのです。もっともっと近づきたいのです。
私はこんなにもあなたのことが好きなのに
きっとあなたは私の名前も顔も覚えてくれることはないのでしょう。
絶対叶わないのに「結婚したい」なんて思ってしまう私は馬鹿ですか?
夜になると、あなたは今何しているのかな、って考えてしまいます。
これは恋ですか?
いや、この感情に名前なんてないのかもしれませんね。
 
あなたの存在が私の生きがいです。
あなたを想わない日はありません。
私はあなたの幸せをいつも願っています。
生まれてきてくれてありがとうございます。
愛しています。
 


 
作品解説
 
 
「推し」
主にアイドルや俳優について用いられる日本語の俗語であり、人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のことをいう。ーWikipediaより
 
 
あなたに”推し”はいますか?
お金も時間も労力もたくさんかけて
それでも会うことすらなかなか叶わない。
報われないことなんてたくさんある。
でもたくさんの愛を与え続ける。
そんな存在はいますか?
 
私は20年生きてきて、その半分の10年間、
対象は変化していったものの”推し”がいなかった日がありません。
年々”推し”に対する愛は深くなっていき、毎日彼らのことを考えるようになりました。
今では私の中で、なくてはならない存在になっています。
 
ただ、”推し”にとって私は大勢いるファンの一人にしか過ぎません。
私の名前や顔を覚えて、私のことを知ってくれることなんてないに等しいのでしょう。
ましてや結婚してくれることなんて奇跡でも起こらない限りあり得ません。
 
それでも好きで好きでどうしようもないのです。
もはや、片想いに近い感情を”推し”に抱いてしまっています。
苦しくて時には涙を流すこともあります。
 
ここまで好きになる存在って何なんだろう・・・。
そう思い、私にとっての”推し”という存在を映像で表現しなくてはならないと思いました。
そして今回、私と”推し”の関係性を描くにあたってスイーツが一番最初に思い浮かんだのです。
 
スイーツと”推し”は似ています。
 
実際、”推し”がいなくても、または”推し”がいなくなっても生きていけると思います。
でも、”推し”がいないと寂しいと思う自分がいて、私は”推し”を見るだけで幸せな気持ちにになります。スイーツも同じです。スイーツを食べなくても人は生きていけると思います。
でも、やっぱり食べたくなるものですよね。私はスイーツを食べると心が満たされ、幸せな気持ちになります。無性に甘いものが食べたくなる日だってあります。
 
”推し”がいない方にはこの感覚はなかなかわからないかもしれません。
自分でもたまに「何をやっているのだろう」と思うこともあります。
それでも推すことをやめられない、どんどん沼にハマっていくのです。
 
 
この真っ白な空間には私と”推し”しかいません。
ヘッドフォンは外界を遮断するもの。
誰も介在してほしくないのです。ここは神聖な場所。
 
私は彼らにありたっけの愛を伝えます。手紙という媒体を使って。
すると彼らもそれに応えてくれます。彼らがくれるのはとろけちゃいそうなほど甘いスイーツ。
私は彼らが返してくれる愛情に溺れ、依存し、またその愛を求めます。
繰り返すごとに大きく膨らんでいく愛情。
 
もう止まらない。
 


プロフィール

 
櫻井 薫
 
2003年生まれ 福岡県出身
 
中学生の頃から映画業界で働くことに憧れを抱き、
東京造形大学 映画・映像専攻領域に入学。
現在、大学2年生。
自然光を使った綺麗な映像を撮ることが好き。人間撮るの大好き。
最近は人間の感情の機微を描いた映像を作りたいと思っている。