せるふぽーとれーと
佐々木美緒
幼い頃の記憶はあまりないものです。実際に自分はよく覚えていません。
しかし我が家には両親が撮っていたその頃の記録が残っていることを知りました。
そこで、何か思い出せるのかしるべくその記録を今一度撮ることにしました。
過去の自分を今の自分が ”撮る ”。それはある種のセルフポートレートになるのではないでしょうか。
対談
プロフィール
阿部実咲 明治大学文学部文学学科演劇学専攻3年
【前提】
中学からの友達で、現在は用事がある時のみ連絡する間柄。一見冷たいように見えるが実際には確かな信頼の元で成り立っている。今回は久しぶりの長話になる。対談は文面でおこなった。
【前談要約】
「あの、制作のお手伝いをしてもらえませんか。対談なんですけども」
相手「もちろん!光栄です」
「そしたら一応動画見てもらうんですけど…全然送れないw」
相手「ww!お、見れそう…」
「ひい(恥ずかしい…)」
【本編】
『作品への感想』
「…まあ、見てもらいましたけども。どうでしょう、どう思った?」
相手「うーん、そうだなぁ」
「セルフポートレートって概念自体を知らなかったから、まず新鮮だったな。自分の脳味噌の外にある過去の自分の記憶を辿るって普段はしないことで、意識しないものだから。写真ってさ」
「本来のセルフポートレートはざっくり現代意訳すると自撮りなんで、今回はちょっとナナメ解釈ではあるかな」
相手「あ、そうなんや。面白いナナメ解釈だね」
「インスタとかが普及して写真が溢れてるこの時代を生きてると、今の自分を取り敢えず切り取っておいて、あとは後ろに放り投げていくって感覚で写真を撮ってると思うんだよね。多くの人が」
「それをじっくりやってる様子をさ、間を長く取って丁寧に撮ってるの、おもしろいなって。思った」
「(ニッコリ)」
相手「ニッコリってw」
「セルフといえど撮ったのは家族でさ、それってしないことだと思い」
「今は割と撮って残すことって普通だと思うけど、我々が小さい頃って今よりそんなに普及してるイメージってなくて。だから小さい頃の記録が残ってるのって貴重なのかなと」
相手「うん、確かにそうかも…特別なことよね。
過去に家族が自分を見つめていた視線とか、過去の家族に「切り取りたい」と思わせた自分の姿を今こうして見直すってことはさ、今の自分や今の家族を見つめ直すことでもあって。なんか自分のこととか、自分を愛してくれる人のことを思い返して、どうにも愛おしくなる映像だったな」
「写真を保存するのも現像するのも今より大変だったはずだもんね」
「デジカメあっただろうけど一般的とはやっぱり思えないんだよね」
『小さい頃の記憶について』
「ちなみに小さい頃の写真て認識してたりする?」
相手「あるある、小さい頃のが3冊。やっぱ幼い頃の写真はいっぱい残ってるよね。昔使ってたカーペットとか、ソファとかが写ってるの見て、あぁそうそう昔はこんなだったなぁって思い返して」
「自分のことは覚えてないのよ、小さいから。当たり前だけど」
「小さい自分を見ても「懐かしいな」とはならないけど、小さい自分がいる環境を見ると「懐かしいな」って思う」
「記憶ないよねーー。親から聞いた武勇伝()はあるんだけどね笑」
相手「わかる、めっちゃ言われる笑」
「覚えてないけど、でもその日の父の服装とかは覚えてたりするのよ、不思議と」
「なんでそこ?!ってとこだけ覚えてる笑」
「覚えてるのか」
相手「断片的にね」
「つい最近の記憶すら危うい人間だからな…」
「それこそ今回写真見て振り返ってもどこか他人事のままなんだよね」
「一人称の記憶が全然ないや」
相手「あーでも他人事なのは同じ!覚えてるのは写真の中に写った出来事の趣旨より、その日の天気とか、滴った汗の不快さとか、父の手に染み付いた煙草の匂いとか、そういうのばっかりなんだよな…」
「エモじゃん」
相手「wwww」
『過去の写真から教わること』
相手「でもさ、写真の中の自分と今の自分を見比べてさ、ふとした共通点を見つけることない?」
「ほほう」
相手「癖とか、えくぼとか」
「過去の写真に自分を教えられる瞬間ってさ、たまにあると思うんだよなぁ」
「私はあれ、ディズニー行った時に撮ったふたりで写ってるやつ」
「おわあ…」
相手「顔の輪郭は今より幼くて、ファッションセンスも全然今と違うんだけど、カメラとの目線の合わせ方が一緒なのよw」
「それ見る度にあ~私ってこういう撮り方するやん…って思うんよ」
「撮っていいよの心になる事少なすぎてフィードバック出来ない事実」
「苦手だし未だに撮られるの内心悶絶してるし」
相手「んっふw」
「写真映るのほんと嫌いよね」
「私も嫌いだったなぁ」
「え、そうなの?」
『写真に写る理由、撮る理由』
相手「っていうかね、私の場合は自分が嫌いだったからかなぁ」
「なんだろ、写真って自分の人格を魚拓みたいに焼き付けられるものだと思ってるし思ってたから」
「今の自分を残したくない!って思ってたけど。でも今は、なんだろ」
「好きになれる自分でいる努力をしてるし、そんな自分の軌跡を残しておきたいって思うから…好きかな、写真は」
「知り合って自分が写真撮るようになってから断られた記憶ないから、なんか、そうだったのか…」
相手「でもさっさん(愛称)に撮られるのは嫌いじゃなかったよ」
「ほう」
相手「一緒の時の自分は最高の状態だし、撮影者が大好きって気持ちが残ればいいって思うし」
「私の記録を残しておこうって思えてくれるのが嬉しかった」
「あなたの中で私はそう思ってくれるだけの価値があるんだなって思えるじゃない?」
「思い出+気持ちか」
相手「そうそう」
「記憶ある写真の撮った経緯って、楽しそうだなとかが発端かもしれない」
「自分もテンション上がってただろうな」
「運動会とかわりと残ってるし、多分そう」
相手「運動会!あるね!」
「文化祭とかね!」
「やっぱ特別な日の特別な気持ちって本能的に記録に残したいのかも」
「集合写真まみれ」
「ww」
相手「いっつも端っこの方にいるふたりだったよね…」
「真ん中、むり、どうぞ」
相手「ww」
「苦手だったなぁ…なんだろね、あれね」
「なんか、そういう時に撮るのってその集団全体との関係性があるから」
「温度差と言いますか」
相手「温度差あるあるwww」
~~盛大な脱線中~~
相手「てか写真からだいぶ話がズレたけど大丈夫?w」
「平気、どうにかする…」
「でもいい気付きではあるよ」
「感情と写真の量と質の関係みたいなの」
相手「うまくまとめよる」
「なんか撮る行為って身近な人に対しては愛情がこもってる気がする」
相手「あー、たしかに!」
「それすっごいわかるかも!」
『撮る量の変化』
「でも最近プライベートで撮る量減ってる…楽しいから残す量が減ってる」
相手「わたし逆に増えたかな、残す量」
「最近の自分の「写真を撮る」って流れを止めちゃうっぽい」
「その時間あるならもっと長く時間共有したいのかも」
相手「あー、カメラに構ってる時間を相手に使いたいっていう」
「会う頻度が下がった影響かも」
相手「わたしは逆に増えたっていったじゃない?あれってさ、交友関係が広がって、いろんな人と期間を空けて会うようになったからだと思ってて。
世界が広がったぶん記憶に残すのが難しくなるから、この大事な出来事の何気ない瞬間を少しでも残したいと思うんだよなぁ。だから相手の写真をすごく撮っちゃう」
「んで自分のことを撮り忘れる笑」
「記録そうなりがち」
「自分が見た世界に自分はいないからね」
『締めの下り』
「anyway」
相手「はいな」
「結構いい話出来たなと」
「身近な人の感覚知れたのはやっぱり嬉しいし、参考になった」
相手「よかった!」
「光栄の至り」
「完成したら見せてね!」
「(゜ワ。 )」
「遅くまでありがとう」(2:00AM)
相手「いいえー!楽しかったよー!」
「ゆっくり寝てくれ」
相手「ゆっくり寝ます笑」