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(俺)と(お前)を巡る

未:記録
尾形陽



 
プロフィール
尾形陽 YOH OGATA

 

 
 
神奈川県出身。東京造形大学写真専攻2学年。幼少期から母親に数多くの
映画を与えられたことで無類の「映画好き」として育つ。
自分自身を肯定し解放するためにセルフポートレートを主に撮影しており、またポートレートや風景写真も撮影している。


 
作品解説
 
本作は小学校からの友人である建築家「鈴木」と高校の友人である漫画家「伊野」の2人に出演して頂いた。まず鈴木に対しては以前撮影した作品『補完』(2021年)において建築家への強い思いを知ったことから、彼の自室を見せてもらいその部屋で目にした「建築の本が縦に入らない本棚」
を新しいものに買い替えようという話になり今回の企画が立ち上がった。
伊野に関しては高校時代に彼から「僕は漫画家になります。」という宣言を聞き、そこから「漫画家になるという目標は一体どうなったのか」その疑問が私の中に残り続けたままだった。
その経緯を踏まえて、「伊野の絵を俺に見せてほしい」という私の願いと「動物園に行きたい」という伊野の願いが重なり、本作に出演するに至る。2人とも多忙であるため本作に対してのコメントなどは残念ながらもらうことは出来なかった。(鈴木は急遽予定が空いたため下のページで対談をおこなっている)伊野に関しては本作を観て頂いた方ならわかると思うが、普段から各種SNSのアカウントを自ら削除してしまう特性があり、本作撮影後の帰りの電車の中である種最後の砦であった私の電話番号を着信拒否設定にしたので伊野と私が再び会うことは当分ない。次に会うとすればそれはお互いの作品を見るときだと私は思っている。伊野が最後に放った言葉は「お前、この作品できたら俺の家にDVDにして送ってくれ!」だった。正直めんどくさいのでやりたくは無い。というかこの映画祭オンラインなんだから見にきてくれと思う。


 
作品解説その2
 

鈴木と建築

 
本作に至るまでの間に『補完』( 2021年)という作品がある。この作品は中学を卒業して滅多に会わなくなった私と鈴木が 3年ぶりに会い、私が今まで聞けなかったことを聞くドキュメンタリー形式の約 6分間の作品である。
 

 
「補完」において鈴木は終始私の漫画棚を気にしているが、彼と会っていない 3年の間に私の所有している漫画が極端に増えレイアウトも変わったのでそれに気を取られているからである。
映像自体は会って 1分と経たずに始まっているが 3年の空白が開いたと思えない自然な始まり方をしている。この作品の中で私は鈴木の建築に対する思いを知る。後日掃除するという名目で鈴木の自室に入ることになるのだが、散らかっているのは所狭しと並ぶ建築の模型とその製作で出たくずや削りカスであった。私はその空間に感動し「建築家鈴木」を再び撮影することを本人と
約束した。それが今回の映画祭に繋がる。
 

 
作品解説その3
 

伊野と漫画

 
そもそも以前に撮影した『補完』(2021年)という作品は
最初は伊野にインタビューを行う予定だった。
しかし、撮影場所決めの段階で彼のInstagramのアカウントが消え連絡が取れなくなった。
私の発言で彼を怒らせてアカウントを消してしまったのかと思い、申し訳なさと後悔の念でいっぱいだった。(後日連絡が取れるようになってから確認したところあれは伊野の完全なる気まぐれであることが判明する。)そのため仕方なく撮影を依頼したのが鈴木だった。
伊野に聞きたかったのは「漫画ってあれからどうしているの?」ということ。再び連絡が取れるようになったのは今年の4月。漫画については「描いてるよ」としか答えてくれず、内容も教えてくれなかった。そこから何回か遊んで一緒に日雇いのバイトなんかもした。そして今回の作品に繋がる訳だが、撮影外で伊野は今考えている作品のプロットをいくつか教えてくれた。これに関してはここに書き記すことはできないが、普通に面白かった。私は伊野のことを天才だと思っているのかもしれない。伊野には「お前が漫画家として有名になった時にこの映像はさらに大きな意味を持つ、俺は鈴木とか伊野みたいな人間が居ることを映像で残しておきたい。」と伝えた。
伊野はそんな私のクサい台詞に食いついて2人で「やってやろうぜ!!!」みたいな気分になっていた。これは後日談になるのだが、伊野と私は「藤本タツキ」という漫画家のファンで伊野から「さよなら絵梨という短編があってあれはお前絶対好きだと思うから読め!」と言われていた。先行でネット上で公開されたこの作品なのだが私は漫画は紙でないと読めない体質なので、単行本になるまで待っていた。そしてつい先日発売されたので読んでみたのだが、これが図らずも私が伊野に対して思っている事や今回の撮影に関して考えていた事と重なるような台詞が何箇所もあった。とても驚いたし、今すぐにこのことを伊野に伝えたいのだがあいにく彼とは連絡がとれないのでせめてもの思いでここに書き記すことにした。


 
撮影時の写真

/1 鈴木と買い物
 

/5 伊野と動物園

 

対談

 
対談相手紹介
 
鈴木賢一朗 Suzuki Kenichiro

 神奈川県出身。本作を撮影した尾形とは同じ小中学校に通っていた。一応親友。 本田翼を愛してやまない男であり、185cmを超える高身長と「喋らなければモテるルックス」(自称)からくる自己肯定感でなんとか心を保っている。将来の夢は「自分が建てた家に家族で住むこと」で現在では建築学内コンペの最終講評に向けて日々奮闘している。

尾形  それではよろしくお願いします。
 
鈴木  あ、そっからやんのね。
 
 
尾形  そうだよ。一応形から入ろうかと思って。
 
 
尾形  まず今回は去年撮った映像の続きを撮影したわけなんだけど、賢一朗的にはどうだった?
 
 
鈴木  あの時話してたことをまだ覚えてたんだーって感じだったかな。俺は半年前に会ったことぐらいしか覚えてなかったからな。本棚を買うって話も尾形の本棚を買うんだとずっと思ってたし、あとお前と会う時は俺が毎回テスト期間中で、撮影とか早く切り上げたくなるから、なんか申し訳ないなって思うわ。
 
 
尾形  今回の撮影の時はずっと「この映像は全部でどのくらいの尺になるの?」とか「ごめんとれ高が少なくて」とか、撮ってる俺より気にしてたよね(笑)
 
 
鈴木  いやなんか、大切な作品だから俺もそういうところを気にしていった方がいいかなと思って、特に親友の作品はね。
 
 
尾形  セリフがくさいな。この発言は使おう(笑)
 
 
鈴木  てかテスト近いから早めに切りあげてくんね?
 
 
尾形  またかよ!
 
 
尾形  そういえば一番言いたかったのはこの作品の中の盛り上がりどころとして「建築の話をしながらご飯を食べてたら、隣の席のお客さんが全額先に払ってくれてた」っていうのがあるけど、あそこで俺が驚いて、その後に高校の友達の伊野に同じ話をして、伊野も「マジか!」って大きいリアクションを取るっていうあれが個人的にも好きで結構いいと思うんだけど。
 
 
鈴木  なんというか俺と伊野くんが最初は関係なしに交互に出てくるわけだけど、それまでは「尾形の友達」っていう共通点しかなかった二人があそこはなんか垣根がなくなってアーティストとかクリエイターとしてのつながりを持った感じがしたな。実際に俺と伊野くんは会ったことないし、尾形を通してしかその存在は知らないわけだけど、なんか近くなったような感じがしたよ。
 
 
尾形  本当は伊野とも対談予定だったんだけど、あいつ全ての連絡先を消して、俺の電話番号も着信拒否にしやがったからマジで一生会えないかもしれなくて、だから記録したいっていう意味でも今回撮影したんだけど「こんなにおもろいやつがいるんだぞ!」っていうのを伝えたくて。
 
 
鈴木  なるほどね。俺は尾形と家近いけど、ほとんど会わないからなあ。
 
 
尾形  意外とね半年に一回ぐらいだし。それも今回みたいに撮影とかがないと会わないしな。普通に遊びでも会えるはずなんだけどね。唐突だけど、次回は「鈴木自分の家を建てる編」とかでお会いしたいと思います。
 
 
鈴木  いいじゃんそれ普通に記録してほしい。でもここで盛り上がっても尾形はこの話覚えてて、俺は忘れてるんだろうな。
 
 
尾形  その時はまた軽い口論から始めればいいじゃん!
 
 
鈴木  それもそうだな!
 
 
           
 
取材・文  尾形 陽