ごあいさつ

平成12年12月12日泉鏡花の「歌行燈」の世界を「幻のお三重」と題して第3回「虹の会」で演奏した。
芸道の厳しさ。因果。純愛。を唄いたかったが未消化に終わった。いつか再びと念じながら早くも20年の月日が過ぎてしまった。闇からの聲がいつか昇華し我が身の声となりうるだろうかと思いながら…。
このたび、頼もしいスタッフと共に想いの糸が結ばれ再び鏡花の世界を舞台化出来る幸せを三筋の糸に託し「闇に燈る聲」に顕したい。
 
西松布咏

公演プログラム

第一部:小唄四曲
第二部:芸と霊
第三部:幻のお三重
     劇中曲作詞:田中優子
     作曲:西松布咏

 
上演時間 100分(途中休憩あり)


解説

芸と霊

芸は伝授してゆく者の魂が亡霊となって演者と重なってゆく。
泉鏡花の「歌行燈」の幻想は死者に導かれた伝統芸が生者へと伝わり、男女の恋とも重なり結ばれてゆく。言葉で確認しあう恋ではなく、踊りの振り写しという肉体的憑依による秘めたる恋である。
恩地喜多八の身体がお三重に芸として写し込まれる。
お三重に生霊としての能が憑いたのである。能を舞う女性のしなやかでありつつも凛々しい身体に。
 
三人のお三重は、
西松布咏、山根基世、服部真湖。
尺八の善養寺惠介は、空気であり、風であり、景色となる。
能の生霊として、能役者の清水寛二。

小説「歌行燈」

「歌行燈」は泉鏡花が1910年(明治43年)1月に発表した小説。

三重県桑名を舞台に能のシテ方宗家の甥である喜多八と、芸の出来ない芸者お三重が、能の『海人』 (観世では『海士』)の仕舞「玉之段」を通じて繋がっていく。深夜の松林で喜多八が舞を伝授する風景と、「玉之段」を舞うお三重の姿が泉鏡花の言葉によって見事に描写される。
1943年に成瀬巳喜男監督、花柳章太郎、山田五十鈴で映画化。1960年には衣笠貞之助監督、市川雷蔵、山本富士子で再度映画化。

泉 鏡花

いずみ きょうか、本名:泉 鏡太郎(いずみ きょうたろう)
1873年(明治6年)11月4日 - 1939年(昭和14年)9月7日。日本の小説家。明治後期から昭和初期にかけて活躍した。小説のほか、戯曲や俳句も手がけた。
金沢市下新町生まれ。尾崎紅葉に師事した。『夜行巡査』『外科室』で評価を得、『高野聖』で人気作家になる。江戸文芸の影響を深く受けた怪奇趣味と特有のロマンティシズムで、幻想文学の先駆者としても評価されている。主要作品に『照葉狂言』『婦系図』『歌行燈』などがある。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


出演・スタッフ

西松布咏

唄と三味線

「美紗の会」「己紗の聲」主宰。
6歳より長唄・三味線の手ほどきを受け小唄・端唄・新内・富本・作詞作曲の修行をする。西松文一師に見出され地唄を習得し「布咏」の名で地唄舞の地方の傍ら現代に古典邦楽が普及するよう異ジャンルの音楽・詩・美術との融合に挑み新たな可能性を探る「ニュアンスの会」「虹の会」を国内外で展開する。現在は古典曲を継承すべく後進の育成に努めながら江戸中期の古曲から自作の現代曲まで「三味線と聲」に関わる演奏活動を模索している。
公式website http//www/misanokai.com
 

山根基世

朗読

1971年 NHKに入局。多数の番組、ニュース、ナレーションを担当。2005年、女性として初のアナウンス室長。2007年、NHK退職後は、朗読を手掛かりとして「子どものことば」を育てることを目的に、地域作りと言葉教育を組み合わせた独自の活動を続けている。
ラジオ、ナレーションの他、今年で6期目となる朗読指導者養成講座を開講、2018年からは「声の力を学ぶ連続講座」を3年間主宰した。

服部真湖

舞踊

1978年、カネボウ化粧品のキャンペーンガールでデビュー。その後も「はなまるマーケット」などテレビを含め多数のメディアに出演。独学で学んだ英語力を生かし「夜のヒットスタジオ」「世界ふしぎ発見」では、世界各地からレポートやインタビューで出演し、元祖バイリンガルタレントとして注目を集める。花柳界育ちの母に育てられた影響で6歳から日本舞踊を始め、三味線 小唄 長唄等の和芸にふれた経験や海外での語学力を生かし、現在も日本の伝統文化の継承 普及 国際文化交流にも力を注いでいる。

清水寛二

能役者。早稲田大学在学中に山本順之の指導を受け、銕仙会(てっせんかい)に入門。故観世寿夫、故八世観世銕之丞、九世観世銕之丞に師事。銕仙会や西村高夫と共宰の「響の会」などで古典能の上演を続ける一方、新作能 『沖縄残月記』『長崎の聖母』『望恨歌』『ヤコブの井戸』などの演出、シテをつとめる。佐藤信演出『霊戯』、田中泯演出『カラダハコレカラダ』、小池博史演出『風の又三郎』など現代劇や琉球の組踊、韓国の農楽などの伝統芸能との共同舞台にも取り組んでいる。2018年よりピアノの高橋アキらと青山実験工房を催している。東京藝術大学非常勤講師。座・高円寺演劇創造アカデミー講師。

善養寺惠介

尺八

東京藝術大学邦楽科卒業、同大学院修士課程修了。在学中は山口五郎師(人間国宝)に師事。2000年、尺八教則本「はじめての尺八」(音楽之友社刊)を執筆。2002年、日本伝統文化振興財団賞受賞。2017年のリサイタルでは文化庁芸術祭大賞を受賞。2018年、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2020年、紫綬褒章を受章。古典を中心とした演奏活動のほか、関東各地にて尺八教授活動を行っている。
公式web site http://zenyoji.jp/

田中優子

作詞「幻のお三重」

法政大学名誉教授・前総長
江戸東京研究センター特任教授
 
法政大学社会学部教授、国際日本学インスティテュート(大学院)運営委員長、社会学部長、総長を歴任。
 専門は日本近世文化・アジア比較文化。研究領域は、江戸時代の文学、美術、生活文化。『江戸の想像力』で芸術選奨文部大臣新人賞、『江戸百夢』で芸術選奨文部科学大臣賞・サントリー学芸賞。その他多数の著書がある。江戸時代の価値観、視点、持続可能社会のシステムから、現代の問題に言及することも多い。2005年度紫綬褒章。サントリー芸術財団理事、『週刊金曜日』編集委員、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」共同代表。TBS「サンデーモーニング」のコメンテーターもつとめる。
  絹や木綿の自然素材で仕立てられ、リサイクル、リメイクのできる着物の合理性と美しさを愛し、仕事は着物で通している。『きもの草子』『布のちから』などの著書もある。
 
著書(単著)
『江戸の想像力』『近世アジア漂流』『江戸百夢』『グローバリゼーションの中の江戸』『鄙への想い』『カムイ伝講義』『江戸から見ると』『苦海・浄土・日本―石牟礼道子 もだえ神の精神』『遊廓と日本人』
著書(共著)
『日本問答』『江戸問答』『江戸とアバター』
 
 
 
 
 

飯名尚人

演出・構成

映像作家・演出家。2002年にDance and Media Japanを設立し、ビデオダンス専門の映画祭「国際ダンス映画祭」を主宰。オンライン舞踏番組「Re-Butoooh(リブトー)」編集長。東京造形大学准教授。映像・言葉・身体を融和させる演出法による作品を制作。演出作品の『アジール』(西松布咏主演・2011)は各地の寺院にて上演された。監督作品のダンス映画『三』は、Jumping Frames (香港・2022)にてアジア賞受賞。大野慶人のドキュメンタリー『愛の夢』は、国際ポートレートフェスティバル(ブルガリア・2022)にて優秀作品に選ばれた。舞踏家・今貂子との共同作品『おんなのぼくしさん』を制作中。

 
 
舞台監督 | 呂師(砂組)
照明 | 溝端俊夫 宇野敦子
音響 | 國府田典明(國府田商店)
演出助手 | 黒田瑞仁
記録映像 | 飯名尚人 中村朱里
記録写真 | 飯名尚人 中川達彦
制作 | 飯塚なな子
 
 
 


チケット予約

〇公演日

 
2023年12月4日(月) 19:00開演(18:30開場)
 
 

〇料金 

 
7,000円(前売・当日とも)
 
 

〇チケット取り扱い

 
前売開始 9月1日(金) A.M.10:00から
【Confetti(カンフェティ)】
TEL:0120-240-540(平日10:00~18:00)
http://confetti-web.com/utaandon2023

 ・ご予約後、セブン-イレブン店頭にてチケットをお受け取りください。
※クレジットカード決済を選択された場合、チケット受け取りは決済後、すぐに発券が可能です。
・お支払いは、Webからお申込の際にクレジットカード決済( VISA / MasterCard / JCB など)、またはチケット受け取り時にセブン-イレブン店頭でお支払いの、どちらかをお選びください。



〇問い合わせ先

 
『闇に燈る聲』制作部
Mail:gei.rei2023@gmail.com
TEL:070-3822-1256(公演当日のみ)


会場地図

〒130-0026 東京都墨田区両国2-10-14 両国シティコア1階
TEL:03-5624-1181
 
JR 総武線両国駅西口下車、左へ徒歩約 3 分
 都営地下鉄大江戸線両国駅 A4・A5 出口徒歩約 8 分

 


メディア


インタビュー


服部真湖インタビュー

 本公演の原作となる泉鏡花の小説『歌行燈』の主人公、芸者のお三重として舞う服部真湖さんにお話を伺いました。

 本公演の原作となる泉鏡花の小説『歌行燈』では能を禁じられた能楽師の喜多八から、芸のできない芸者のお三重へと、能の演目『海士(あま)』の仕舞「玉之段」が伝授されます。伝統的に男性が舞うことを前提に受け継がれてきた能の仕舞を、女性が教わり舞うという倒錯が登場人物の心情と相まって、非常に美しい作品を象徴する名場面の一つになっています。 今回の『闇に燈る聲』では服部真湖さんが原作通りこの能の仕舞「玉之段」を舞う一方で、女性を中心に舞われてきた地歌舞「珠取海女」も披露するのが一つの見所です。服部真湖さんは舞踊というものにどのように向き合ってこられて、そして今回の舞台に望むのかを語ってくださいました。


清水寛二インタビュー

 本公演の原作となる泉鏡花の小説『歌行燈』の重要人物、喜多八として舞う能楽師の清水寛二さんにお話を伺いました。

 泉鏡花『歌行燈』では芸のできない芸者のお三重へ、能を禁じられた能楽師の喜多八が禁を破って伝授する重要なモチーフとして能の『海士(あま)』の仕舞「玉之段」が登場しますが、この仕舞にはどんな意味が込められているのでしょうか。『海士(あま)』は貴族である藤原不比等(ふじわらのふひと)との間に生まれた子供のために竜宮にあるという貴重な珠を海に潜り必死に持ち帰るという一介の海女の姿が描かれた物語であり、仕舞「玉之段」ではまさに海に潜り龍の目をかいくぐって珠を持ち帰る海女の姿が表されています。 『闇に燈る聲』のもう一つの原作ともいえるこの『海士』ついても検証しながら稽古は進んでいます。喜多八として舞う能楽師の清水寛二さんはどのように『海士(あま)』と『歌行燈』の二つの物語を重ねているのか、語ってくださいました。


山根基世インタビュー

 本公演は泉鏡花の『歌行燈』を原作にその小説世界を音と舞、そして朗読で表現します。この朗読を担当される、山根基世さんにお話を伺いました。

 泉鏡花の『歌行燈』はそれ自身は西洋の表現である小説という形態を取りながら、能や舞踊といった日本の伝統芸能に取材した物語であり、今なお私たちに芸の息遣いを感じさせてくれる名作です。そして同じように本公演で現代を生きる私たちにその小説の言葉を届けていただくのは、伝統芸能を専門としない出演者である長年NHKアナウンサーとして活躍された山根基世さんです。 朗読は伝統芸能とどこが違い、あるいは同じなのか。どのような工夫や技術に裏打ちされているのか。アナウンサーのお仕事と朗読はどのように異なるか。実践を交えながら語っていただきました。

闇に燈る聲