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Layers

 
 
コロナ禍において表現する場が制限され、日々葛藤する中での幸せとは?ダンサーの少女がもがいていくストーリー。
映像作品だからこそ、表現可能となった過程から本番までの道のりを1つの層として捉えたドキュメンタリーであり、身体表現でもある、短編映画作品。

作品は過程があってこそ成り立つ 

 

写真 久保田朱音

舞踊の舞台表現と映像表現の比較

 私が通うバレエスタジオでは舞台での披露が厳しい中、普段踊りの練習をしているスタジオを舞台として、身内での発表会を行った。コロナ禍前は大勢のお客さんを前に、スポットライトが当たる舞台上で踊っていたことが当たり前だった。
 だが、今回は舞台空間の境目がなく、練習から本番までの過程が一体し、重なり合わさった空気の層のようなものを感じた。その練習から本番まで一体は、油絵のように油絵具を何層にも重ねて一枚の絵に仕上がる過程と同じようにみえた。それらを映像表現として、本番に向かう練習から本番までの踊りをひとつに仕立てようと考えた。 

書 /写真 御舘彩


私が感じるさまざまな表現とのつながり 

 私が日々の中で見つけたレイヤー(層)は踊りだけではない。
例えばグラフィックデザインは、パソコン上でレイヤー分けをし、それぞれの図形や文字、写真などを重ねることで一枚のポスターが仕上がる。アナログの面での例をあげれば、写真の現像やプリント。フィルムを現像しプリントする際には何度も焼き込む。つまりものづくりにはレイヤーが欠かせない。
 またその重なり合いは、私自身が続ける舞踊表現の他、書道においても同じようなことを感じた。書道は二度書きが許されない。一作品を一発で書き、軌道修正しながら何十枚、何百枚と書き、最終的に一枚の作品となる。作品の裏側には何層にも重なった練習してきた紙が積み重なっている。それは先ほど述べた空間が層になってみえた、あの感覚と似ている気がしたのだ。

コロナ禍の今、作者が考えること 

 
 当たり前の日常が当たり前ではなくなってしまった。大学生活2年目を過ごす今、友人同士たわいもない会話をして、勉学を学ぶことがどれだけ幸せなことなのか、思い知らされた。空間やコミュニティ、そしてこの映像作品にもレイヤーが重なりあってできているのではないかと思う。
 制限されてしまう世の中で、オンラインという言葉はマイナスなイメージが強いかもしれないが、オンライン映画祭を通して、前向きに捉えられることもあるということも忘れたくはない。 
 ここ一年、中止となってしまった様々なイベントの記録と記憶の重要性を目の当たりにした。世界が一変してしまったあの日から、私の創作意欲が燃え続け、新たな考えを模索し提案し、私はその記憶を記録し続けた。 
 私は、日常の中で起こる偶然や置かれた境遇によって、葛藤する中であるだろう幸せとは何かを模索し続けている。

写真 久保田朱音

写真 御舘 彩

そしてこの作品は、幼い頃から踊りを共にしてきたバレエスタジオでの同期、3人の合作でもある。演者を志し、ダンサーとして出演してくれたゆうな。服飾を学び、衣裳制作をしてくれたゆきの。撮影後に行った3人での鼎談の一部を記載する。  
 

写真 長濱遥香 / 左から(ゆきの あや ゆうな)

 
あや「まずはかなりハードな撮影だったのにも関わらず、2日間、最後まで本当にありがとう。」 
 
ゆうな「いえいえこちらこそ。そもそも同期3人でこれが完結しているということがすごいよね。」 
 
あや「でもさお互い大学へ入学してから、それぞれ進む道がクリエイティブ系だったこともあって、冗談混じりで『いつかこの3人で何か作れそうじゃない?』って話してたよね。」 
 
ゆきの「エモいな~!」 
 
あや「このプロジェクトの授業で1人1作品撮るってなって、すぐ2人の顔が頭に浮かんだし、フェアリーで撮りたいって思ったもん。」 
 
ゆきの「スタジオの存在ってやっぱり大きいよね。そもそも、うちらは小中学校の同級生でもあるけど、3人で一緒のクラスになったことはなくても、それぞれクラス一緒だったこともあったじゃん?でも学校ではそんな一緒にいる仲ではなかったよね。」 
 
ゆうな「そういえばスタジオの先輩と話した時も、『私たち学校だったら絶対仲良くならないタイプだよね』みたいな話をしてたんだよね。」 
 
あや「あー確かにね~」 
 
ゆうな「本当にバレエスタジオって不思議な場所だよね。それに同期だけでなく、先輩から後輩、普段交わる機会が少ない年齢の人とも交わることができるしね。」 
 
あや「そうだよね。特に発表会のリハーサルの期間は私たちより10個上の先輩から10個以上、年下の後輩まで、一緒に発表会の舞台を作っていくからね。そういう意味では作品を多くの人と一緒に作り上げることの喜びみたいなことは、幼い頃からバレエを通してもう既に経験していたんだなぁと思う。」 
 
ゆきの「うんうん。学校とはまた違った特別な場所だよね。」 
 
あや「しかも、今まで同期3人だけで踊るってことはあまりなかったから、この映像作品で一緒につくれて嬉しかった。作品の趣旨に関しては、撮影前にゆうなと相談しながら深めて、認識のズレがないように言葉におこして、お互い考えていることを擦り合わせたり。衣装に関してはデザイン画を見てもらって、問屋さんでも相談しながら生地選びをして、その後も一度衣裳合わせをして修正して作ってもらったり...。」 
 
ゆうな「それぞれが得意とする分野が合わさった合作だよね。」 
 
ゆきの「今回もそうだけど、それぞれが色んな面で、良いバランス取れてると思うよね。」 
 
ゆうな「そうかも~!」
 
あや「確かにそれは言えてるかもしれない(笑)」
 
※フェアリー バレエスタジオ名の略称 
  
 
  

作者より…

最後に私自身、通い続けること17年、とても大切な場所であり、大好きなフェアリーバレエスタジオを舞台として、作品を作らせていただけたこと、とても嬉しく思います。日頃からお世話になっていますバレエスタジオの美樹先生。ありがとうございます。
 そして、それぞれの道の分野でこの作品を彩ってくれた同期の2人をはじめ、バレエスタジオでの後輩から大学の先輩、みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
 


 

監督/撮影/編集/構成/演出/衣裳デザイン装飾/ ポスターデザイン/メイク 御舘彩 
ダンサー 高雄結女 
衣裳 石井結紀乃 
撮影/写真/アドバイザー 長濱遥香 
写真/演出 久保田朱音 
アシスタント 大里真亜彩 
協力 フェアリーバレエスタジオ 二村美樹 
書道用具提供 河村永 


作家プロフィール  

 

御舘 彩(Aya Mitachi
 
2001 年生まれ
3歳よりクラッシックバレエ、 9歳より書道家である祖母・信泉の影響で、書道を始める。   
20201月 日中青少年書画友好交流コンクール入賞。   雅号を取得する。雅号名「彩苑」
2020 2 月 ロサンゼルスハモサビーチにて「Japanese calligraphy trial free event 」を開催。  
書道会では漢字科、硬筆科、細字科、かな科、条幅科にて毎月出品し、それぞ れの科目にて多数入選する。
 現在、東京造形大学インダストリアルデザイン専攻在籍。
専攻分野を超え、写真や映像など幅広く学び、独自の表現を模索している。  
 
ポートフォリオ Webサイト
https://fairyaya629.wixsite.com/website
 

出演者プロフィール

 
高雄 結女(Yuuna Takao)
 
2001 年生まれ
音楽大学でミュージカルを学びながら、ダンススキルを活かしたモデル・演者活動を展開している。
これまで MACコスメティックの WEBCMや、橋本優紀『 I know』など多数のミュージックビデオに出演。
また、4 silent birds 主催のSummer Girl Audition に入選し、現在はスペシャルアンバサダーを務める。
 
Instagram
https://www.instagram.com/contemporary__ballet