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GRAINY TOONS

制作:清水優

 
8年前、ボールペンとコピー用紙を手に取り僕は一本のアニメーションを作りました。アニメーションといってもろくに動くものでもなく、パラパラと絵が切り替わっていくコマ撮りのようなものでした。
月日は流れ、僕はまた一本のアニメーションを作りました。あの時からだいぶ時間が経ち、使っていた道具はいまやボールペンではありません。5年くらい前なら付けペンを使っていたでしょうが、今使っているのはタブレットのスタイラスペンです。
僕はあの時の筆跡をたどり、もう一度アニメーションを作ってみることにしました。8年前、そして5年前…。僕がどのような線を描いてきたのか、どのように描いたのか。時を同じくして生まれた一匹のキャラクター「レイニー」と共に振り返ります。
 
小学6年生の頃、友人がストップモーション動画を作ったのに触発されて、「なら自分はアニメーションを!」と3DSのゲームソフトやパワーポイントなどを活用して自分なりのコマ撮り動画を作りました。そして中学3年生の頃、僕はテレビで漫画家さんの密着番組をやっていたのに触発されて、近所の文房具屋を回り道具をかき集めて漫画を描きました。そして今、僕は美術大学という場でデジタルを中心に絵を描いています。これまでの自分のペンの変遷を通して、僕の今の絵がどのようにできたのか追いかける映画になっています。皆さんもぜひ自分の今を形作るものたちを辿りながらご覧ください。
 


過去振り返る座談会 

僕ら世紀末生まれ

 
同じ時代に生まれ、同じ専攻に所属する4人がどのような線を描いてきたのか。座談会を開催しました。それぞれどんな違いがあるのか…。案外一緒だろうと思って挑んだこの座談会、予想外のことばかりでした。
筆者:清水優
 
お話ししてくださったメディアデザイン専攻の皆さん:
石山さん、清水力尚さん、堀越さん
 

 
 

8年前にスマホ、5年前にタブレット
 
優:僕らの8年前と5年前ってものすごく激動だったって思うのがさ、大体8年前にスマホが流行り出して5年前に(本格的なデバイスとして)タブレットが出てきた気がすんだよね。だからその時期に変わったって人もいるんじゃないって思うんだけど…
力尚:確かに俺もその時期くらいに、高一だったかなバイトしてペンタブ持ってた気がする
石山・堀越:早っ!
優:へぇーっ!あでも、そんくらいん時に俺もお小遣い貯めて板タブ買ったっけなぁ
石山:俺も高3で買いましたね、安いやつ
優:まずやっすい奴だよね(笑)んで付属のソフト使ったり
石山:激安の板タブに、メディバンっていう安上がりなやつを(笑)
優:俺ファイアアルパカってやつ使ってたなぁ、でも僕はそこまでフルデジタルでもなくて。5年前くらいだったらつけペンとか使ってた。gペンとか丸ペンとか…
石山:そんなん使ってたんすか
優:そう使ってた。売ってるお店が近所にあって
力尚:gペンいいなぁ、カブラペンは持ってた
優:あれも使いやすいよね
堀越:そんなのあるんだ…
 

鉛筆に、DSに、子供の頃は…
 
優:堀越がこの前言ってたのが小学校の頃(8年前)めっちゃポケモンの絵描いてたって
堀越:小学校の頃は描いてた…
石山:俺もめっちゃポケモンの絵描いてた
優:なんかみんなある?コロコロ買ってめっちゃ描き写してたとか
堀越:小6はね…まじでカービィめっちゃ描いてた。あとあの時は…スマブラかなぁ
力尚:流行ってたねぇ
堀越:なんか「亜空の使者」めっちゃ流行ってたから、自分なりの(アレンジを)作って描いたりしてた
優:それはノートに鉛筆とかで描いてたんだ
堀越:そう
優:堀越って今でも鉛筆勢だよね、色鉛筆とかもよく使うじゃん。それいいよね
堀越:大学までまじで鉛筆勢だった。いやでもみんなそうだよ、iPad持ったら人生変わるぜ
一同:(笑)
堀越:逆にアレ最初から持たない方がいいよ。ある程度描いて、アナログが先が絶対いいって
優:でも最近はそうだよね、スマホで指から描くので絵を描き始めましたって人も多いもんね
力尚:いるいる
石山:まじで指でよく描けるわ
堀越:たまにすごい上手い人いる
優:ね!ほんとにすごい(笑)
石山:小6だと「うごメモ」めっちゃ描いてましたね
一同:あ〜
力尚:今も現役で描いてる人もいるもんね
優:あ〜なんか流行ってたYouTubeで。確かになんか、DSで描いてたはあるわ
石山:「うごメモ」はよくやってましたね。棒人間で戦わせたりしましたね、くそくだらないの(笑)
堀越:あ〜やってた
優:小学校の頃ってそんなに意気込んで描いてなかったよね、今だと完成させようとかあるけど。普通に楽しみだけで
 

 

画材とか予備校に入るまで持ってなかった…
 
優:高校の頃(5年前)になって小学校(8年前)と変わったこととかあった?
石山:自分は美術部入ったから、油絵とか描き始めて本格的に始まりましたね
優:それすごいよね、画材とかそこまで持ってなかった
堀越:うん、予備校入るまでなかった
優:堀越とかは受験時代にだんだんアクリルとか習ってたよね
堀越:ベタ塗りね
優:それを趣味の絵とかでも使ったりしたの?
堀越:趣味はね…色鉛筆だね(笑)ベタ塗りも今はパソコンあるからほとんど使わなくなったね
優:ま、そうだよね〜

 
デジタルは描いてて楽しい、純粋に
優:今となってはデジタルを使われる皆さんですけど…。ほらこの前話したみたいにProcreateの図形の描画補助がすげーって話したじゃない?あーいうのがあって描きやすさとかも全然違うよね

石山:違いますね
堀越:いや〜もう違う。死ぬほど(描くのに)ハマった(笑)
一同:(笑)
優:(できることが増えて)楽しいよね、純粋に
堀越:そう、描いてて楽しい。色塗りはむずい(笑)
優:デジタルの難しいところではあるよね、一つのペンでどんな(画材の)表現もできるって
石山:そう…迷う!これもやってみたいあれもやってみたいって(笑)
優:アナログだと「この筆買えない!」とかできない表現ていうのもあったけどね
石山:そうそうそう、(デジタルだと)なんでもできちゃうから
力尚:無限にやっちゃう
優:無限だからこその楽しさと、無限だからこその難しさがあるからね
力尚:あといくらでもズームできちゃう。描き込んじゃう病が(笑)
優:あ、それわかる!
石山:いやまじ不思議っすね。油絵やってたときにはどれだけ描き込めるか勝負みたいなところがあったんですけど、デジタルでそれやるとめちゃめちゃクドイ絵になる
優:そうだよね、匙加減(の感覚)が全然変わってくるからね
石山:逆に力を抜くっていうか、ちょうどいいくらいで抑えるっていうのが全然アナログと違って難しいなって思う。でもそれをやることで、逆に油絵とかのアナログが上手くなるような気もするんですよね…
優:確かにそうかもね…
 

  ご協力いただいた皆さんありがとうございました!
 

最後に…
少し前に友人にポロッと「僕の絵って特徴ないんだよなぁ…」と愚痴ったところ、「めちゃくちゃ特徴あるよ!」と突っ込まれたのがとても印象に残っています。さすがに嘘だと思ったのですが、なんと友人は僕がこっそりネットにあげた絵をぴたりと言い当ててしまったのです。自分のさまざまな経験が、自分の絵にアイデンティティを吹き込んでいることに驚きました。そして、色々なペンを持ったからこそ今の線が引けるのだと改めて実感しました。
皆さんの線はどのような道のりを辿ってきましたか?そして、これからは…?


清水 優

東京造形大学造形学部デザイン学科
メディアデザイン専攻3年
 
お気に入りのペン変遷
 
・10Bの鉛筆
とにかく数字が大きいことが誇らしくて、ちんちくりんになっても使った。
 
・そこらへんで配ってたボールペン
これを使っていると大人っぽい…。するするすべる感覚も描きやすかった。
 
・100円のシャーペン
尖った芯で書くのが苦手だったので、ペタッと平べったくなるこのシャーペンがお気に入りだった。
 
顔料インクの筆ペン
黒が濃いのが好きだった。伸びがいいのも良い
 
・ミリペン(0.3ミリ)
書くも良し、描くも良し。オールマイティさが使いやすい。
 
・SARASA
滑りが本当にいい。インクの乾きが遅いのが玉に瑕。
 
・染料インクの筆ペンについている小筆の方
ミリペンの進化系みたいな感覚。これを超えるものはない。
 
・Apple Pencil(第二世代)
第一世代に比べてサラサラしているペンが使いやすい。ペン回しにちょうどいい重量感。