HOME | 飛鳥


透明


飛鳥






わたしは、何を知りたいのか。
「わからない」を知りたくなって。
誰かと過ごす時間を記録した。
 
わたしのこと。
きみのこと。
それとも他の、誰かのこと。
何のことを?
 
わからない。そもそもわからないって何?



一人暮らしの私と
実家暮らしの2つ下の妹との

電話で今話す昔話。

 
 
妹「もしもし」
私「もしもし、久しぶり」
妹「ああーちょっと待ってて、まだ片付け終わってないから」
私「何の片付け?」
妹「モルモット(実家で飼ってる二匹)」
私「ふっtt」
妹「だからちょっと待ってて、終わったらかける」
私「はーい、じゃーねー」
 

20分後、電話が鳴った。

 
妹「もしもし終わったよ」
私「おーお疲れ」
妹「ご飯食べてたら、こんな時間になっちまった」
私「ころたち(モルモット)の掃除なんでこんな遅いの?」
妹「帰ってきたのがそもそも10時半で、ご飯食べて、11時くらいになって、みたいな」
私「あれお母さんは?」
妹「ソファで寝てたよ」
私「掃除しなさいよお母さん…」
妹「まあ最近バイト帰りだとこの時間だから大丈夫よ」
私「そうなのね」
 
 

そのあと大学の課題が溜まってて、だるいね、という話をした。

 
 
私「課題といったら、私がきょうかを撮ったデータが消えまして」
妹「え。やば」
私「だから私があんたと話したこと、全部忘れてしまった」
妹「何でぇーー。あ、また(撮影)?来週4日に帰ってくるんだっけ」
私「まあそうなんだけど。
 映画祭の自分の作品にまつわる対談?的なのをウェブサイトにのせるのね、それを君にしよう
 と思って電話した次第」
妹「あーそういうこと!…どうぞ」
 

 

昔話① 成長

 
私「せっかくなので、昔の話をしましょう。ていってもどんだけ昔のこと覚えてる?てだけなんだけど。きょうかが覚えてる、生まれてから一番古い記憶は何?」
妹「え?…いつだろ。幼稚園の年中くらいはある。」

私「年中!何があったの」
妹「なんかね。クラスが変わって。ゆき組じゃん確かあたし。」
私「うん、そうだったね」
妹「そんとき急激に身長が伸びたんだよね」
私「…!!!あ!そうじゃん年少のころ、あんたチビだったよ」
 
妹「うん、チビだったんだけど年中にかけてすっごい伸びて。で、それまでお母さんに自転車で家まで、後ろの子供が乗るところに乗せてってもらってたんだけど、坂登るときに『降りて歩いて』って言われるようになった」
 
私「(大笑い)」 
妹「気がする」 
私「よく覚えてんなそんな話」
妹「あたしそのとき結構ショックだった」
私「(大笑い)小さい頃は可愛かったな。ほっぺぷにぷにで癖っ毛でさ。
 でも何でかどんどんでかくなって。今身長、160何センチだ?」
妹「162」
私「でか」
妹「もう止まっていいよ。でも、高2は163だったのに、高3で1センチきっちり縮んでさ。『もう一回測ってくれませんか』って頼んだわ。結局縮んでて、ちょっとショックだった」
私「(苦笑い)」
 
 
 

昔話② 不運

 

中学校、私と妹は同じテニス部だった。妹は高校でも続けた。

 
私「そういえば、きょうかは怪我しなかったね」
妹「そうね、怪我しないよねあたし」
私「関東大会の試合直前に、割れたガラスに足突っ込んで足出血したのとは別の話ね」
妹「あれは別。出血は多かった」
私「ん!?何があったっけ」
 
妹「覚えてる?頭もやったよ。あーでも、お姉ちゃんはもういないか。」
私「あれ?なんか…」
妹「中2の頃、1年生だけ試合できる機会があって。その会場準備でグラウンドにテニスコートを立ててたとき、地面に刺せるタイプと置くタイプのポールがあるじゃん」
私「あ、聞いたことあるぞ」


妹「させないやつだったことに気づかず、チェーン伸ばす時に床に安定してなくて、ポールがガーンっって倒れてきて、頭にぶっ刺さった」
 
私「うっわ…」
妹「漫画みたいに血出てきて」
私「あれ、頭って大丈夫だったんだっけ、縫った?」
妹「医療用ホチキスでとめたけど」
私「…うわあ」
 
妹「顧問の先生が準備後結婚式だからタキシードで。そんな先生の手を真っ赤にしてた。さすがにスーツは汚さなかったけど、やばかったわ」
私「思い出した。聞いたとき『え』ってなったな」
 
妹「あのあと2年はやることないから練習試合に行く予定で、1番手同士で試合したらしいんだけど、あたし当時1番手だったのに行けなくて2番手のペアが試合したらしいから、ペアの子に怒られたよね、試合したかったのにーーって。めっちゃ言われた」
 
私「気をつけてよ。流血沙汰多いもん」
妹「それな、本当に」
私「今だから笑える話だけど。最後の試合も何やってんのよ」
妹「あれはウケた」
私「ただあんた覚えてる?めっちゃ強気なこと言ったんだよ。
   『高校で関東大会行けばいいじゃん』って」
妹「覚えてないな。言ったっけ?」
私「言ってたよ」
妹「まあ、実際関東にいける状況だったけど。
  シードあるし、前の大会県で10番以内に入ってたし、よっぽどのことなけりゃ」
 
私「すげえな、あれでも何で」
妹「コロナで潰れたよね」
 
私「……そうじゃん」
 
 
 

今の話

 

明日1限からなのと、まじで課題がだるいと妹は嘆いていた。

 
私「だるいって言ってるけど。何で国際科にしたの?」
妹「え?就職で役立つかなーくらいよ」
私「そんなもんかい」

妹「でも結構外国には興味あるし普通に。異文化学ぶのは面白いし前々から知りたかったよ。あと、第二言語があったから」
 
私「フランス語だったよな確か」
妹「実際難しい。ちょっとだるい」
私「だるいのかい。何がむずいの」
妹「文法とか。知らん未知の単語出てくることが多い。まじで」
私「それは当たり前でしょうよ、違う言語だもん」
妹「笑」
 
妹「でもロシア語とか興味あるな」
私「発音むずくない?」
妹「多分やばい。あたし巻き舌できないんだよね」
私「あー私もできない。どうやってできるの」
妹「はは、知らん」
私「巻き舌とか…口笛はできる?」
妹「できるよ」
私「できんの!?やってみてよ」
 
妹「…♪(掠れた口笛の音)」
 
私「これできてなくない?」 
妹「ちょっと待って!!…♪♪~」
 
私「できてるね」
妹「お姉ちゃんはできる?」
私「実はできない人間なのよそれが。……(凄く掠れた音)」
妹「いうてできてるんじゃない?」
私「できてねーわ!(スースーと掠れる口笛)」
 
妹「やば(けたけた笑う)」
 
私「私たち。こういう口笛みたいな些細なこと、多分知らなすぎだね」
妹「…うん」
 

会って話したらその都度、こういうのが出てくるんだろうな。
姉と妹だから。近くいすぎてお互い干渉してこなかったから、
 
ある意味で、興味がわかなかったんだ。




わからないこと。
答えを求めて、ひとりで湖へ行った。

 





結局見つからなかったけど、
掴んだものを、歌に乗せた








この声は、誰に届くかも「わからない」。

 

Profile
 
 

飛鳥  2000年8月生まれ 
神奈川県出身。
東京造形大学映画映像専攻3年
映画祭に掲載するのは初。
中学、高校は部活で勤しんで夢中なことがなかったが、
空想や映像は好きだった。
自分探しのため、美大へ入学。
歌詞や散文を日々noteに書いている。