gash of memory
07'14"
Artist: Hana Oshima
作者から・・・
流れ着いたそれは、確かに誰かの記憶であった。
私はそれを燃やした。私はそれと対話を試みた。
繰り返し燃やし続けることによってそれは事実となり、そこに存在した。
誰かの記憶であったそれは、私の記憶であったのだ。
本作品は流れ着いた布を「記憶」と見立て、それを燃やすことで自身との対話を試みた作品である。
広い海の上で漂っていた記憶は、私の前に現れた。
鼻をかすめる潮の匂い、腕に張り付く砂つぶ。ほおを切り裂くように強く、硬い海風。足裏の皮膚に痕を残す、流木や貝殻。漂流物の記憶を構成しているそれらは私の身体に触れ、3回4回と繰り返し燃やしていくことで、私は自身の記憶と重ね始めた。
鋭いガラスが左足の親指に刺さり、三角形の深い溝ができた小学2年生。今、私の足裏には細枝の痕がついている。ウミガメの甲羅、頭部だけが残っているサメ。10歩く度に目が合うフグの死骸。流木に混ざり小さくそこにある檸檬。波の動きに合わせ顔を見せていたカニ。燃え続ける記 憶は、私がふつふつと断片的に思い出してゆく記憶よりも早く、ゆっくりだった。
徐々に増え、積み重なってゆく燃やされた記憶はただの灰となり、そこには記憶が存在していなかった。ただ、事実だけがそこに残っていた。
Drifted ashore, it was someone's memory.
I burned it. I tried to talk to it.
By burning it repeatedly, it became a fact, it was there.
Meant to be someone's memory, it was my memory.
This work is an attempt to have a dialogue with myself through the burning of the cloth washed ashore as a "memory."
These memories floating on the open sea appeared in front of me.
The smell of the tide across my nose and the sands sticking on my arms. The sea breeze was strong and stiff and tore at my cheek. The driftwood and seashells left marks on the skin of my feet. The elements of the drifters' memory, as they touch my body and as I burned them three or four times, I start to layer them over my own memories.
I was in the second grade when a sharp piece of glass pierced my left thumb of the left toe, creating a deep triangular gash. I now have a thin twig mark on the sole of my foot. The shell of a sea turtle, a shark with only its head left. The corpse of pufferfish that meets my eyes every 10 steps I take. Small lemons amongst the driftwood. Crabs showing their face along with the waves. The burning memory is faster and at the same time, slower than my fragmented flashbacks.
The burned memories, which gradually increased and built up, became nothing but ashes; there were no memories there in the first place. Only the facts remained there.
作家プロフィール
大嶋はな
2001年東京都生まれ
私立桐朋女子高等学校卒業
東京造形大学造形学部デザイン学科映画映像専攻
「記憶」をモチーフとして、写真や映像、インスタレーションを手掛けている。
・ 2017年 「尻おも精神分析展」『大嶋はな役』(写真インスタレーション)
・ 2018年 『魑魅』(映像作品)
『軌跡』(記録映像作品)
『大嶋はな役:』(写真作品)
『dazziling』(写真作品)
・2020年 グループ展示「思い出の墓場」(新宿眼科画廊、東京)では、コラージュ作品を展示
大西優里亜
2000年東京都生まれ
私立桐朋女子高等学校卒業
日本大学芸術学部 演劇学科 洋舞コース
シャラモダンジャズダンススタジオ所属
2 歳の頃からジャズダンス・モダンダンスを始め、今はシアタージャズダンス を専門にコンテンポラリーダンス、クラシックバレエなども学ぶ。
・ 2016 年 Nextreem21 ダンスコンテスト ジュニア部門優秀賞受賞
・ 2017 年 一般社団法人日本ジャズダンス芸術協会主催ダンスコンクール 中高生部門 奨励賞受賞
・ 2017 年 座間全国舞踊コンクール 一般部門 審査員特別賞、座間文化芸術振興会賞 受賞
・ 2017 年 Legend Tokyo vol.7 SHOJIN 作品出演
・ 2018 年 XFLAG PARK オープニングショーにダンサーとして出演
・ 2018 年 日本ジャズダンス芸術協会主催特別公演 出演
・ニューヨーク Ballet Arts にダンス留学
・ 2019 年 一般社団法人日本ジャズダンス芸術協会主催ダンスコンクール 振り付け作品において指導者賞受賞
山田結子
2000年東京都生まれ
私立桐朋女子高等学校卒業
東京藝術大学美術学部彫刻科
・2017年 「信仰無宗教山田会思想」(新宿眼科画廊、東京)
「尻おも精神分析展」
全日本学生美術展『蝶』入選
鼎談 山田結子・大西優里亜・大嶋はな
山田結子(以下、山田)「では、インタビューを始めさせていただきます」
大西優里亜(以下、大西)、大嶋はな(以下、大嶋)「よろしくお願いします」
山田「今回の作品を映画祭で発表するにあたって、どのような発想で生まれたの?」
大嶋「私は基本的に、作品を制作するときにこれをやりたい、これを使いたいって言うのがあって、そこから徐々に構想して作品を作り上げていくタイプなのね。それで今回は鉄パイプを使いたくてそこからこのような形になった」
山田「鉄パイプを見た瞬間にこれだってなったの?」
大嶋「特に何かを見たから私も使いたくなったってわけではなくて、本当にポンッて出てきた」
山田「構想を聞いたときに、ダンスの指示とかはされた?」
大西「あまり大きく動かさず、その場で、小さくじゃないけど、ダンスの作品にはならない方がいいって最初から話してた。ちゃんと映像作品として残さないといけないから、作品の中でダンスのあり方だったり、ダンスメインになってはいけないって言うのは話してたよね」
大嶋「ダンスじゃなくて、身体がそこに在る。っていうことを軸としてね」
山田「なるほど。作品を見たときに結構ドキュメンタリーっぽい印象を受けたんだけど、ドキュメンタリーっぽくない?」
大嶋「初めて言われた」
山田「結構さ、大嶋はなが撮る行為って、大嶋はなが撮る行為をしすぎて全部作品がドキュメンタリーっぽいっていうか、ゆいこが大嶋はなを知ってるから映像作品を見た人にはあまり分からないかもしれないけど、全部大嶋はなのドキュメンタリーみたいな。作品を見ていると、レンズを覗いている大嶋はなが見える。本当に全作品を見てほしい」
大西「わかる、中学時代から友達っていうのはあるよね」
山田「それもあるよね」
大嶋「自分ではそんなこと考えたこともなかったからびっくりした」
山田「客観的に見ると本当にそう。主体になりすぎて本人気付いてない」
大嶋「そう、私自分のこと客観的に見れないから(笑)」
大西「でも確かに、構成を二人で練って、これをやろうって決めてたわけじゃなくて即興の部分もあった。海ならではの、その場で起きたことに臨機応変に対応していくって感じだからそういうところがドキュメンタリーに見えたのかもしれない」
山田「うん、構想を練って作るような感じには見えなかった。即興のように見えた」
大西「私の踊りも全部即興で踊ったんだよね。海の波に合わせて踊ったり、枠組みの中で踊らないといけないとか」
山田「その場に行ってみて、決めたと言う感じか」
大嶋「高校生の時に、ゆりあ(大西優里亜)と一緒に作品を作ったけど、(『軌跡』)その時はちゃんと構成とかも全部考えて制作したのね。でも今回は記憶っていう抽象的なものをテーマにしているから、ガッチリと構想を練るっていう感じではなかった。これはやりたい、みたいなある程度、撮りたいものは決めて、あとはその場で対応していくって感じ」
山田「大嶋の高校時代の作品って結構感覚的というか、感覚的って言葉だけで言っちゃいけないと思うんだけど。そういう作品作りの過程って結構感覚だからね」
大嶋「いろいろ高校時代から作品を作ってきて改めて、記憶に関することを元に作ってることが多いなと思った。記憶って割と感覚的なものであるから、やっぱそうなっちゃうのかな」
山田「映像自体が淡々と進んでめちゃくちゃ変なことをやってるのに、大嶋のその感覚の中に二人ともちゃんといて、その感じが結構不思議だった」
大西「確かに淡々とっていう感じはめっちゃある」
山田「二人の中でも淡々としてたという。布を燃やしてたけど、そういうのとかにも意味はあるの?」
大嶋「一応、布が流れ着いた記憶と見立ているのね。それを燃やすことで、自身の記憶と重ね始めて、記憶との対話を試みるっていうことをテーマにしてるから布は記憶」
山田「結構不思議だね。ゆりあ(大西優里亜)自身が結構コンセプトとして、ただの人物として映ってたじゃん。普通に女の子っていうか、演じてるとかそういう意識もないって感じなの?」
大西「布が燃えて、穴が開いてくとちょっとずつ私が浮かび上がる、その布を通して見える私が記憶って感じ」
山田「走馬灯みたいな感じか。どうして海という場所を選んだの?」
大嶋「両親がサーフィンをしていて、幼い頃から海に連れて行ってもらってたというのも関係してるのかもしれないけど、青い海と、赤く燃える炎を見たかったていうのはある」
山田「作者自身が映像に出るっていうのは意味があったりするの?」
大嶋「一応私が、そこで起きている現象と自身の記憶を重ね始めるから」
大西「今まで見ていたものが最終的に、はなが映ることではなが見ていたものだったっていうのをね」
大嶋「そう、私の視線がそこにあったよっていう感じ」
山田「その存在を気付かせる。なるほど」
山田「普通にこの作品の手応えみたいのはあった?」
大嶋「撮影や編集してて、すっごいワクワクした。今年に入ってから作りたいって、心から思える作品だった」
山田「意気込みを形にしたんだね」
大嶋「そう、やっと作れた」
大西「ね、やっと作れたんだよね」
大嶋「作品を作れることの喜びが大きかった。高校生の時のワクワク感を思い出した」
山田「そうだよね、大嶋は結構カメラを回すのが癖というか、いい場面を切り取る癖がつきすぎてて、だからこの作品もその延長みたいな感じがする」
大嶋「何だろ、高校生の時に作ってた作品は記録映像作品で、だからそこで起きていることを記録しようって意識が強かった。それで記録をすることに意味を見出そうと自分なりに
考えていて、それの蓄積が今の作品にあるって感じかな」
山田「普通に撮るっていう日常からすでにポテンシャルとしてあって、その延長で作品を作ったってことか。
あと、2人が無の状態でその場で作品を撮って帰る。っていうことがゆいこにはあまり分からなかった。どういう友達関係なのって」
大西「もともと仲良かったけど、高3ですごい仲良くなって。やりたいこととか、目指しているものとか、共通点が割と多くて価値観がすごい合う。作品や、やりたいことに対してもそうだし。だからはなとだったら一緒にやりたいと思えるし、多分はなもそう思ってくれたから今回作品を作れたのかなって」
大嶋「6年間同じクラスにはならなかったけど、高3のときに隣のクラスになって、ブランクも一緒だったりしてね。2人とも芸術志望で私は一応パフォーマンスに興味があったから、それを制作する上でもダンスを専門とする友達と話していくうちに、こんな踊りもあるんだなって知ることができた、本当に感謝している。高3の時にゆりあ(大西優里亜)と作品を作って、今後も一緒に作るんだろうなって思って、今も一緒に作りたい作品を考えてる」
山田「もう二人の空気が一体してるのか、充満してるのがすごいなと思った。今後のことについてどう思う?」
大西「結構、私は舞台に立つことやリアルで自分の踊りを見せることが多かったけど、はなの映像作品を見たり、出演してからは映像も素敵だなってとても思った。画面越しで伝えることは難しいけど、それが伝わった時は私も嬉しいし、どんどん挑戦したいなって思った。」
大嶋「今までは、あることをする行為そのものだったり、パフォーマンス作品に興味があったけど、ゆりあ(大西優里亜)とお互い作品を共有しあっているうちにダンスをしている作品も撮りたいなと思った。私がディレクションをして作品を作りたいなって思う」